2006年1月13日(金)
楽しみながら日本語を学んでもらうのが一番の狙い―。クリチーバにある大山語学塾(大山多恵子代表)は、日本語学習者を対象にした教科書『日本語入門1』(全百十五ページ)を作成、出版した。編集に携わったのは、大山さんを中心とする教師九人。今後は初級、中級と続けて作成していきたい考えを示している。
この案は二〇〇〇年から検討されていたが、何度も手直しをして去年十月に完成した。今までは、日本で使用されている教材をもとにコピーしたプリントを教科書としていた。「でも、これじゃ追いつかなくなってきて。何度もコピーして作り直さないといけないから、教科書を作成することにしました」。また、きちんとした教科書があることで学習意欲も増すという。
教科書には、「あいさつ」「駅で」「店で」など場面ごとに設定し、実用的な日本語を掲載している。ひらがな、カタカナ練習帳のページでは裏を印刷せず、白紙にすることで何度も練習できるように工夫されている。
現在、教室では常時八十人が日本語を学んでいる。年間を通じては百五十人が同塾を訪れる。「最近は非日系人の熱意がすごいです。アニメの影響ですね。自分たちは難しい言語を勉強しているという誇りもあるんでしょう」。課外授業として書道、アニメ、マンガ教室などもある。また、日本語学習者だけではなく、駐在員や留学生などの外国人を対象にしたポルトガル語の教室も三、四年前から始めた。
大山さんは、現在七十歳。大陸の農業にあこがれて一九五九年に来伯した。入植したグアイーラの日本人会で日本語を教えはじめたのをきっかけに、現在まで日本語教師として活躍している。
クリチーバへは夫の仕事の都合で移住し、同塾を一九八三年に設立した。「始めた頃に比べて随分と非日系人の生徒が増えました」。出稼ぎに行く人もこの塾をよく訪れるそうだが、「すぐに必要な日本語だけ覚えて日本に行っちゃうからもったいない。一番困るのは子どもを連れてくる親。すぐ日本の学校に馴染めるか分らないし、もう少し勉強してから行くべきでは」と問題点を指摘する。
去年八月には、二世の教え子とその父兄が経営する群馬県大泉町にある「日伯学園」を訪れ、同教科書を扱えるか要請した。静岡県湖西市の国際交流課にも行った。「やはり、まだ出稼ぎ子弟のためのちゃんとした教科書がないことがわかった。日本でもこの教科書が将来役に立てば嬉しい」。
今後について「この学校は日系社会の中で育ったけど、もっと多くのブラジル人にも日本語を学ぶ機会を与えたい。この教科書で楽しみながら日本語を学んでもらえたら」と話し「今回はあくまで入門編。今後も教科書を作成していきたい」と目標を語った。
同教科書は、トッパン・プレスの奥山クララさんの協力を得て高野書店、フォノマギ書店、太陽堂などでも扱うことになった。
問い合わせ電話は41・3222・8333(大山語学塾)まで。