2006年1月18日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】時代の変遷により、ブラジルで物の見方や考え方に変化が起きている。従来の為替概念が変わり、カントリーリスクの観測でもどんてん返しが起きている。インフレは、ネギカモのように都合よく推移してくれる。ブラジルを過去三十年悩ました対外債務不信も治まり、ウソのようなことが起きている。バカの一つ覚えのように為替政策の不在を嘆いていると、取り残される。事業家は頭を切り替えて、新しい風を読むべきだと、セウソ・ミング氏が叱咤する。
國際環境の好転は、ブラジルだけに順風なわけではない。中国やインド、韓国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシアも同じ。人件費の廉価なアジア諸国が、生産原料や副原料、食糧をブラジルから大量輸入をするからブラジル経済に好循環が起きたのだ。
ブラジルを取り巻く環境は、米市場という格好の大市場が誕生した二十世紀から形成されていた。だが米国自身が自国の消費財を生産した頃は、米国に原料も食糧も石油もあったので、ブラジルなどの原料供給国を必要としなかった。
米国とアジアの違いは、後者が無資源国であり、エネルギー資源も極端に対外依存をしている。ここでもブラジルの出番が、大きく期待される。結論からいえば、アジアが世界の経済秩序を塗り替えている。
為替市場の動向や米国の財政赤字は、アジア諸国の関与次第ともいえそうだ。日本やEUの通貨政策にも長期金利の扱いで大きな影響を及ぼし、アジアが米国債を買い支えている。これまで日本などの先進国が、独り占めにしていた國際資本をアジア諸国が引き寄せつつある。
格安なアジア諸国製品が世界の市場を席巻し、國際経済は先進国の所得低下など変革を余儀なくしている。先進国経済が中国などアジア諸国へ及ぼす影響やこれからの動向は、予測が困難となった。
ブラジル経済は、アジア経済の強烈なインパクトを受けることになる。ブラジルの経済関係者は、まだ頭の切り替えができず旧態依然だ。為替対策や貿易、通貨政策、金融政策で、どうしたらよいか分らず、まだ面食らっている。
中央銀行はドル介入をするが、それは単に外貨準備のためであって、為替介入ではない。〇六年のドル相場は、二・三〇から二・四〇レアル辺りを推移。輸出は年間で二三%増を記録するが、工業製品の輸出は三%止まりと予想される。ブラジルの国内総生産(GDP)が七千五百億ドルであれば、成長率は三%前後を推移すると予測。
〇六年の輸出が千百八十億ドルを上回れば、年々二〇%増で次期政権が終了する五年後、輸出は二千九百億ドル位まで伸びる。GDPは一五・七%から三三%まで、頭の切り替え次第で飛躍する可能性がある。
幸いドル安を嘆く声は、止まった。サンパウロ州工連(FIESP)は〇六年の貿易黒字を悪くて三百十二億ドル、上手くいって五百三十億ドルと見ている。ドル安を煽っている高金利は〇六年、一四%位と見る。
通貨不安は〇二年の大統領選で懸念されただけ。以後は、政治危機やパロッシ財務相の吊るし上げにあっても、レアル通貨は揺るがない。〇六年の大統領選で番狂わせが起きるなら、予想しなかった國際資本の流出があるかも知れない。
レアル通貨に異変が起きても、それは中銀の責任ではない。時代の変遷が、読めない石頭連中の責任である。世界の生産と金融の流れは、アジア諸国を中心に激変し判断基準も変化している。政府を批判する前に、自分のロウソクが消えないよう世界経済の風向きを判断すべきだ。