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インフレ成金の終焉=経営手法と営業益が変る

2006年1月18日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】高金利政策で最大の抵抗を試みるのは、僅かなブラジルの高所得階級であると中央銀行のメイレーレス総裁は八日、記者会見で述べた。インフレの波を上手に乗りこなしたインフレ成金は、インフレが懐かしい。
 換金性は高くインフレ上昇率が最も早い商品に投資し、在庫すれば寝ていて儲かったのだから笑いが止まらなかった。このインフレ遊泳術を心得ていた人たちは、当時の国家資産の多くをむさぼった。
 ようやくハイパーインフレも下火となり、低所得層が息をつけるようになった。それまでインフレで蒸発していた給料が、空腹の子供のためにもう一個パンを買えるようになった。爪楊枝でごまかした食事も、少し潤うようになった。
 企業家も、インフレで儲けた組だ。月初めに千レアルの給料を約束し、月末には五百レアルの価値しかない給料を払えばよい。あとの五百レアルは商品価格を毎時調製した企業家の懐に入り、金融市場での投機で儲けたのだ。
 労働者は、給料日まで自分のサラリーを会社に預ける。会社は給料日まで、労働者の給料をオーバーナイトへ投入し儲け、配当金や価値修正、利子は労働者に渡さず自分の懐に入れていた。給料ばかりではなく、買い掛け品も同じ。
 ハイパーインフレのころ、スーパーや薬局、ガソリンポスト、卸問屋など現金取引をする企業または、分割払いで必ず入金が保障された取引は常に含み益が転がり込み、あぶく銭で丸々と肥えた。
 ところがインフレの鎮静で金融投機が不可能となり、金利は途絶えた。商品に上乗せしただけの僅かな利益で経営を切り盛りするため、事業主はやる気をなくした。現在のマージンは、コスト削減や厳しい規定、周到な販売戦略、ハイテク、生産性と能率で生み出されるのとなった。
 企業経営のスタイル変化と二つの現象が、同時に起きた。一つは、IT革命によるインターネットの出現。もう一つはグロバリゼーションによる市場開放の波である。
 インターネットはオンライン販売で商品在庫と人件費、販売コストを極端に減らし、店舗やインテリア、立地条件を不要にした。市場開放は企業を國際競争にさらし、さらにドル安が追い討ちをかけた。
 強風が果樹に吹き付け、枝にしっかり結実してない果実は吹き落とされた。このような中、高金利に対する抗議で怒気を含んで説明した。日々ドル安が進行するとき低金利にしたら、何が起こるかと。
 夢よ、もう一度と願っているインフレ成金は、樹から落ちる果実。高率インフレにもゼロ・インフレにも御する術を習得して欲しい。インフレの鎮静は所得の再分配に役立っている。物価の安定が、低所得層を救っている。