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ネット上に移民史料館=JICA横浜の海外移住資料館が開設準備=南米各地の貴重品=デジタル化公開へ

2006年1月24日(火)

 インターネット上に移民史料館を再現、世界から閲覧可能に――。JICA横浜の海外移住資料館(以下、横浜資料館)=横浜市中区=は「移住資料ネットワーク化プロジェクト」をこのほど開始した。これは、南米各地の類似資料館や各地日系団体が所蔵する移住資料をデジタル化して、横浜資料館が一括して管理し、広く一般に公開するもの。この一環で「広島市デジタル移民博物館」の開設準備も現在進められており、二月八日から公開が始まる。同調査のために来聖中の担当者に詳細を取材してみた。
 第二次大戦前には約七十七万人、戦後は約二十六万人の日本人が海外移住し、現在はその子孫をふくめて全世界に二百五十万人の日系人がいる。そんな海外移住史と日系人の現在の姿を伝えるために、〇二年十月に開館した横浜資料館は現在、千六百点の移住資料を展示し、〇五年末までに六万六千人の来館者を迎えた。
 その活動を充実させるため、「移住資料ネットワーク化プロジェクト」が先ごろ開始された。「南米各地に今ある資料館をネット上で再現する計画です」と同資料館で司書の岡野伸治さん(海外日系人協会)はその考え方を説明する。
 このプロジェクトを主導する小池芳一主査(JICA横浜)ら三人は十六日に来伯。北伯ベレン、トメアスを皮切りに、カンピーナスの東山農場、サンパウロ市の移民史料館、人文研、レジストロ、ペレイラ・バレット、バストス、ローランジャ、さらにボリビアのコロニア沖縄やサンファン、アルゼンチンの日本人移民史編纂委員会など訪れる。各地で移民資料館を調査、貴重な史料を所蔵する日系団体と打ち合わせをし、二十九日に帰路につく予定だ。
 この計画に先駆けて広島市は二月八日から、同市からブラジル、ハワイ、北米、ペルーへの県人移住者が現地で撮った写真、移住先で使用した道具類など約二千二百点の写真を説明付きで、インターネットで閲覧できる「広島市デジタル移民博物館」(http://dms-hiroshima.eg.jomm.jp)を一般に公開する。
 同サイトは地域ごとに四つのセクションに分かれ、各々「移民地区の拡大」「日系人社会の形成」「排日運動と戦争」「移住者の生活」のテーマで分類される。同市は八四年から収集をはじめ、日本一ともいわれる資料を持っている。
 小池主査は二十日、「今のところ、全ての機関で興味を持ってもらっている」と成果を語った。「現地のものを収奪せず残しておけることが大事」と利点を強調した。
 現地の資料館から展示物の写真と説明文をメールで送ってもらい、それを横浜資料館がデータ入力や管理、専用サイトで公開する。アドレスは未定だが、横浜資料館サイト(www.jomm.jp)からリンクをはる。JICA所有のコンピューターや回線設備を使用することで、各地の資料館が費用をかけずに情報発信できるようになる。
 今後、各地で所蔵されている移民関連資料のリストをつくり、どこにどんな資料があるかが分かるデータベース「情報検索システム」(www.ir.jomm.jp/index.html.ja)も拡充する。
 実現すれば、インターネットを通して簡単に移住史を調べられる時代が訪れそうだ。