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農業の基本は「土づくり」=農協セミナー=参加者ら再確認=ピラール・ド・スル森岡農場(多角・複合経営)へ遠出=堆肥づくり現場を見る

2006年2月1日(水)

 やはり「土づくり」が農業の基本だと再確認―。パラグアイ、ボリビアをあわせ全伯各地から「第六回日系農協活性化セミナー」に参加していた農協代表者らは、一月二十七日、サンパウロ州ピラール・ド・スル市にある森岡農場(森岡忠夫農場主)を視察した。サンパウロ近郊農業が環境の変化により経営困難になってきている現在、同農場は多角経営、複合経営を実践し、規模を拡大してきた。森岡さんは昨年、山本喜誉司賞を受賞。同賞選考委員会の小川彰夫文協副会長、杓田美代子文協副会長らも視察に参加した。
 一行は午前六時、ニッケイ・パレスホテルを出発。八時半頃、ピラール・ド・スル文化体育協会(古株一男会長)に到着し、とうもろこし、バタタなどの栽培の様子を見学した。森岡さんの長男・正さんと次男の明さんの案内のもと、果樹園や牧畜も視察した。
 所有地総面積は、六百七十アルケール。一九五九年に二百七十一アルケールの土地を購入し、とうもろこしとバタタの栽培を始めた。翌年、ウシの飼育を行い、堆肥づくりも同時に始めた。一行はこの堆肥場も見学。
 堆肥は二千トンのおがくずに豚糞や、虫の糞までも混ぜる。酸素を入れるため、一カ月に一回、六十度から七十度に(その次は七十度から六十度に)温度で切り替えるそう。また、雨よけの屋根も設備されている。正さんは「有機物なら何でもいい。とにかく発酵させることが大事」と説明し、「とにかく土づくりが大切です」と強調した。
 パラグアイ日系農協中央会の内山新一副会長は「堆肥に対する意気込みを見習わなければと思った。もともと肥えた土地ではなかったみたいなのに、ここまでの土を作り上げたのは素晴らしい」。
 数年前からは、木酢をつくるため、宮坂四郎博士(元IACダイズ主任研究員)指導のもと小規模な炭焼きをはじめた。木酢は有機農業の分野で普及されつつある。堆肥に混ぜることで微生物にとっては好適な住処となり、増殖する量が変わってくるという。
 同農場では果樹栽培も行っており、イタリアぶどう二千五百本、スモモ一万五千本、デコポン千五百本などが植えられている。柿は「富有柿」「渋柿」あわせて三千本。カナダ、オランダ、スペイン、ドイツなどには輸出しているが、現在の目標は日本とアメリカへの輸出。柿生産者協会(森岡明会長)から在サンパウロ日本国総領事館を通じて要請している段階だ。同協会輸出責任者の城島将男さんは、「一年中、日本で柿が食べられるようになるという期待もあるけど、旬にしか食べない習慣があるみたいなので、売れるかどうかはまだ疑問だ」と話す。
 午後からは農協婦人部ピラール・ド・スル支部手作りの料理が振舞われ、その後座談会が行われた。同農場紹介と、山本喜誉司賞授賞式の様子を映したビデオを鑑賞。それぞれ、セミナーに参加しての感想や、各農場の様子を話した。
 ピラール・ド・スル南伯農協の安藤禎重理事は「五日間参加して、皆さんと交流できたことがよかった」。藤井博ラ・パス農協理事も「みなさんお互いに経営に課題を持っていることがわかった。非常にいい収穫」とセミナーの感想を語った。
 ブラジル農拓協中央会の近藤四郎会長は「この農場はいつも親子が相談しあって経営している気がする。工夫点など、真似できるところは真似して私どもも何とかやっていきたい」。吉泉美和子農協婦人部連合会会長も「二回目の見学だったけど、どこも整理整頓されていて管理がいい。これが原点だと思う」と話した。
 同農場でも、後継者育成が問題。明さんは「いい果樹をたくさん作っていきたい。森岡さんは「私どもの農場は普通のありふれた農業です。ずっと土づくりに力を入れてきた。農場はもう、息子に譲っている。彼らが今まで通り、計画をまっとうしてくれることを祈っている」と期待を示した。