2006年2月3日(金)
百周年を記念して日本人移民史をマンガにして広く紹介する計画が、サウーデ文化体育協会(桂川富夫会長)で進められている。同協会は日伯修好百周年の一九九五年に日本の歴史をマンガにした本を出版して補評判を呼び、約三千部を売った実績がある。来年、同文協の四十周年を迎えることから両方の記念する事業として実施する。
「織田信長とか、日本の歴史の英雄すら知らない世代がどんどん育っている」。桂川会長は強い危機感を持っている。九三年に外務省研修で訪日した折り、学研が発行するマンガ日本史に出会い一冊もって帰った。「最初は単純にそれをポ語訳しようとしたが、写真の著作権に問題があることが分かり、独自に出版することにした」と十三年前を振り返る。
九五年十一月の出版記念式典は、サンパウロ市議会で盛大に挙行した。約四万レアルの費用をかけ、初版千五百部を刊行したがすぐに売り切れ、第二版も同部数印刷したが残部数はわずか。移民史料館で販売(十五レアル)されている。
同文協の鈴木清ジョルジ学務部長は「若い世代に読んでもらうには、やはりマンガにするのが一番だと思った」と語った。
大井セーリア同館長は「あのマンガはとても評判がいい。日本移民史版がでれば、きっと歓迎される」と評価する。「今ある日本に関する本は言葉遣いが難しくて、厚くて、高い本が中心。本当は要約だけ分かれば良い読者も多い。もっと薄くて、気軽に手にとれるものとしてマンガは最適」と分析する。
今回の計画では予算は五万レアルで、一万冊を印刷する予定。百六十頁。主人公が自分の体験として、移民の歴史を語っていくストーリーだ。
笠戸丸の神戸港から始まり、平野植民地のマラリアによる悲劇、日本病院の創立、南米銀行やコチア参組の経緯、救済会を作ったドナ・マルガリーダ、戦時中の苦労や勝ち負け紛争なども織り込んでいく予定になっている。資料集めを担当する矢野京子顧問は「個人の名前をどこまで入れるかなど、すごく難しい問題がいろいろある」という。
桂川会長は「マンガという形式自体が日本文化。それを使って表現することにも意義がある」と考える。計画をプロデュースする佐藤紀行フランシスコさんによれば、委員全員で登場人物のイメージや設定、ストーリーを話し合って決め、それをレイアウトや作画の専門家に依頼する段取りになっている。
〇四年十一月から計画は始まり、すでに百周年祭典協会にも提出。毎月会議を行い、〇七年八月二十六日のサウーデ文協創立四十周年に間に合わせるように出版したいと考えている。
同会長は「個人でも会社でもかまいません。広告などの形で資金協力してくれる方を求めています」と呼びかける。主旨に賛同する人は同文協(11・5058・6958)まで。
一日系団体としては非常に珍しい意欲的な取組みだ。本来なら、ブラジル日本文化協会が取り組んでもおかしくないぐらいの意義あるプロジェクトだろう。出版されれば、全伯の日系団体や日本語学校でも必須の書籍になるかもしれない。