2006年2月8日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】〇五年香港で開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、収穫も保障もなかったものの見通しが明るくなったとランプレイア元外相が見解を述べた。唯一の収穫は二〇一三年までに、補助金に支えられたEUの輸出農産物の廃止で言質を取ったことといえる。
WTOは、ドーハ・ラウンドのつまづきで権威を落としていた。國際貿易はWTOの裁決を守らず、資金力に守られた保護貿易が我が物顔で罷り通っている。
WTOにとって〇六年は重要な年になる。WTOの役割が最終的に決定される中で、ドーハ・ラウンドの審議も進められる。〇五年までとは様子が違う。それは、米政府が議会から貿易振興法の有効期限を〇七年の中頃までと切られたからだ。ドーハ・ラウンドも、自動的にその中に入る。
期限を限定された米政府は、ドーハ・ラウンドの結論を迫られて〇六年は忙しい。農産物補助金ロビストも日程調整の時間がなく、議会と協定更新を折衝するチャンスもないようだ。
ブラジルはドーハ・ラウンド協定に念願の基本的二協定を特記することだ。九〇年以来苦しめられてきた農産物の完全開放。これを交換条件とする同程度の工業製品とサービス分野の市場開放の二つである。
現在ジュネーヴで折衝中のドーハ・ラウンドでは、途上国G―20の代表国ブラジルが苦戦している。それは政治的にしたたかな中国やインドの発言力のほうが強大となり、ブラジルがG―20の代表には求心力を欠くからだ。
G―20間第一のジレンマは、優先順位の度合いが各国食い違うこと。最終目的の農業問題のためにG―20からブラジルが孤立しないように、またG―20が分裂しないように配慮しなければならない。
反面ブラジルの工業製品やサービスに関する市場開放で、ブラジル企業が踏み潰されないように気を付けねばならない。国内企業は高金利と重税という大きな鉄の玉を引きずりながら、攻めて来る外資系企業と戦わねばならない。
特に、中国の雪崩的攻撃に留意することだ。しかし、我々にも切り札はある。歴史に培われたところの示現自在な情勢対応能力である。ブラジル企業は国家の保護を受けたことはなく、いつも自力本願であった。そのため足腰の強い企業に育った。
ドーハ・ラウンドは、理想的な結論に達すると見られる。誰も協定を妨げることはないと思われる。欧米諸国は、短期容認は無理といいながらシブシブ従う。日本もスイスも早すぎると不平をいうだろうが、協定の成功は間違いない。
これら先進国では、農業問題がロビストのメシの種になっている。他に農産物は、食糧安全保障もかかっている。食糧問題は戦略上、内堀である。特にブラジルの特産物は、戦略物資が多い。食糧の市場開放には、内輪の事情があって解決に時間がかかる。
ブラジルは自分の分際を見極めながら格好をつけず農産物の世界需要で天下を取った気分にならず、工業分野の後退も計算にいれながら調整して行かねばならない。得意分野で有頂天になると、目には目のシッペ返しを受ける。これが國際慣例と思わねばならない。