北米サンフランシスコの日系社会に日本語を話す中高年対象の放談会があるそうだ。最近の集会の参加費が二ドルだった。茶菓代である。大まかにいって五レアルだ。意外に安いと思った。というのは、相当以前から、ブラジルは物価が安く、米国や日本は高いという先入感のようなものがあったからである▼七〇年代の半ばごろだったか、訪日したとき、同級生たちにブラジルの賃金水準をたずねられたことがある。稼ぎのよくない者が、物価が高い日本に来るのはたいへんだろう、といった理由からだった。そのとき、大体日本の(キミたちの)四分の一、ただし、生活費も四分の一くらいだろうから、まぁまぁ暮らせる、と答えた記憶がある▼ブラジルの労働者(給料生活者、被雇用者と言ったらいいのか)の賃金格差は大きく、一概に日本や米国と比較できないのだが、現在、賃金水準はさておき、生活費が四分の一とはとてもいえない。ブラジルは、これだけは日本、米国に急速に近づいてしまった▼中高年者の趣味の集まりの会費が、米国とほとんど変わらなくなっているのが、いい証拠だ。米国の物価が安いのではなく、ブラジルのが総じて上がったのである。レアル一桁(ひとけた)の会費など、いまでは珍しいといえるのではないか▼街のラーメンの値段は十レアル(約五百円)以上が常識である。日本のラーメン値と近づいており、来伯したばかりの若者たちは「ブラジルは高い」と言ったりする。物価恐るべし、だ。(神)
06/02/08