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商議所 業種別部会長懇談会――――「セーラ候補当選」か?! 数年は経済好調の見通し=連載(上)

2006年2月10日(金)

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)が主催する「業種別部会長懇談会」が七日午後、サンパウロ市のクラウンプラザ・ホテルで開かれた。テーマは「二〇〇五年の回顧と二〇〇六年の展望」。今年は選挙とサッカーW杯の年。レアル高や高金利、中国製品台頭などの要因の中で、この一年のブラジル経済はどのように進むのか。選挙の行方からオートバイの売れ行きまで、会議所内の十一部会代表が、それぞれの業界から見た現状と見通しを語った。
 当日は西林万寿夫在聖総領事が出席したほか、大使館からも担当書記官が来聖。会員企業関係者を中心に約八十人が参加した。
 田中会頭は冒頭のあいさつで三十年あまりに渡って続いてきた同懇談会の歴史を紹介。「代表者の生の声による業界動向は各社の経営戦略の決定に役立つものと思う」と述べるとともに、開催に尽力した総務、企画戦略両委員会と各部会、会員に謝意を表した。
【コンサルタント部会】今年は大統領をはじめ州知事、上下連議の選挙が行われる「政治の年」。十月の投票を前に、赤嶺尚由副部会長が大統領選挙の見通しを語った。
 現職のルーラ大統領(60)と、対抗馬として浮上するPSDBのセーラサンパウロ市長(63)。赤嶺さんは今後の争点として、使途不明金五十億レアルと言われる政治スキャンダルの行方と、先頃決まった最低賃金引き上げの効果を挙げる。
 最賃引き上げによる経済的プラスと、汚職事件による政治的マイナスが選挙にどう作用するのか。またはセーラ候補が事件の追及で得点を稼ぐのか。「〇二年の選挙より激戦。見る側にとっては面白い展開になる」と赤嶺さん。「マイナスとプラスが二極化を描きながら決選投票になだれこんでいくでしょう」との見方を示した。現時点での予想は「セーラ候補当選」。
【金融部会】〇五年は、世界経済の成長がブラジルの輸出好調につながった。一方石油価格上昇にともなう金利引上げ(その後段階的に引下げ)によって、年間経済成長率は当初予想の四%を下回る約二・四%にとどまる見通し。銀行業界では個人向け貸出しが伸びている。
 ブラジル経済は今後数年間明るい見通し。今年の選挙結果によってブラジルの経済政策が大きく変わることはないと見られている。年間経済成長率は三%後半の予想。貿易は輸出部門の好調が続く。金利も徐々に下がると見られる。為替も当面はドル安レアル高の傾向が続く見込み。
【貿易部会】〇五年は輸出輸入ともに過去最高を記録。輸出は約千百八十億ドルで前年比二二・六%増。貿易収支は約四百五十億ドルで前年比三三%増加した。中でもアルゼンチン向けの輸出が大きく伸びた。
 輸出の半分以上を占める工業製品のうち、大きく伸びたのが送受信機で前年比九八%増。乗用車の輸出も三割以上伸びた。鉄や農産物などの一次産品では鉄鉱石や、鶏肉、コーヒーが伸び。国際価格の下がった大豆は伸び悩んだ。輸入では中国からの電気電子分野での輸入が増加している。
 対日貿易は、輸出が約三十四億ドルで全体の八番目。鉄鉱石、鶏肉、コーヒー豆のほか、エチルアルコールが大きく伸びた。対日輸入は約三十四億レアルで五番目。自動車関連の部品などが増加している。
 十二月の中銀予想によれば、〇六年の貿易収支は三百五十五億ドルの黒字。レアル高の影響で輸出は伸び悩むが、貿易黒字は高水準を維持する見通し。アルゼンチンとの経済協議の推移も注目される。
【化学品部会】農薬や石油化学品から化粧品まで業種が多岐にわたる同部会。〇五年は、ドル安による輸出利益の減少、中国製品の増加などの影響で利益の減少したところが多く、厳しい年となった。
 農薬部門は南部の旱魃や、大豆・綿花の国際価格下落を受けた国内作付面積の減少により、農家の購買意欲が減退。市場の好転もあって〇六年は販売の好転が期待されるが、ドル安による輸出価格の低迷が心配される。
 食品香料の分野では、経済の好調により消費者需要も伸び。現在「健康」をキーワードにした製品開発の動きがあり、市場が伸びる要因と考えられている。
 筆記具はおおむね好調。「昔から選挙の年は筆記具が売れると言われています」と板垣義実部会長は期待を表わした。
【機械金属部会】製鉄、電力、大型プラント、農業機械など各分野で良いスタートを切ったが、レアル高や中国品流入の影響で下期に入って業績が下がったところもあった。通年ではおおむね好業績を維持。〇六年は選挙、レアル高などの影響はあるが、各社とも増加傾向を見込んでいる。
 製鉄鋼材分野は〇四年のパニック買の影響による在庫過剰、国内需要の低迷により、前年比三・九%減少した。ただし価格の高止まりのため各社とも好決算。〇六年は粗鋼ベースで三千二百九万トン、四・一%の微増を見込む。販売、輸出も増加を予想している。
 電力分野では、経済成長に伴う電力消費の増大により、数年のうちに電力危機が起きる可能性が指摘されているが、検討中のプロジェクトは進んでいないのが現状。発電需要は低迷しているが、〇六年は送電/変電システムの強化により新規需要が期待される。アマゾンのマデイラ水力発電プロジェクトも動き出すと見られる。
 農業機械分野は穀物相場下落の影響で低迷。台数ベースで二二・五%の減少となった。〇六年も厳しい状況を予想しているが、中長期的に見ると市場の将来性は高いという。
(つづく)