2006年2月14日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】南アフリカのプレトリアで開催された進歩派政権首脳会議に出席したルーラ大統領は十二日、世界貿易機関(WTO)が懸案の事項の採決では参加百四十八カ国の了承を待たず、多数決制へ変更することを求める意向を明らかにした。WTOは主要参加国の了承を取り付けるため、大多数を占める発展途上国の意向を無視した合意内容にまとめられる可能性があると、大統領は懸念した。また大統領は同会議で、こう着状態のドーハ・ラウンドに早期決着を促すためブレア英首相の支援を求めたが、同意を得られなかった。
進歩派政権首脳は、ブラジルを始め南アフリカ、英国、スウェーデン、エチオピア、ニュージランドなどの代表であった。ドーハ・ラウンドの早期決着に挑むルーラ大統領の意見は、会議終盤に提案された。大統領案はG―8と途上国連合のG―20が会した膝つめ談判となったが、不発に終わったようだ。
大統領と英首相の会談は二カ月間に三度目となった。英首相へのドーハ・ラウンド支援取り付け要請は、今回のアフリカ外遊の主要目的であった。大統領は農産物の市場開放と農業補助金制度の廃止で、先進国首脳と途上国連合首脳との全面対決を目論んでいた。
伯英首脳会談は十二日早朝、二十分間行われた。英首相は言葉に窮しながら、アモリン外相が要求するラウンド最終決着のための首脳会談開催について即答を避けた。EU国間の討議不足のため、まだ意見の調整が行われていないというのだ。
英首相は記者団に対し、ルーラ大統領案に対する即答を避けた。しかし、ドーハ・ラウンドは早期解決を要する問題であり、決裂も修復も許されない深刻な事態を招くのっぴき成らない懸案であると述べた。先進国にとっては安全保障の根幹を揺るがし、途上国にとっては死活問題である。食糧は原油に匹敵する戦略上の議題であると英首相は語った。
ブレア英首相とスウェーデンのペルソン首相は、進歩派のメンバーとして意思表示はやぶさかではないという。両首相はEUにも属するが、EUでは進歩派のメンバーとしてお互いに意見交換をすることに異存はないと、白けた雰囲気を繕った。ペルソン首相は、ドーハ・ラウンド決裂が国連改革にも甚大な影響を及ぼすと懸念した。
ルーラ大統領は執拗に、現システムの非合理性を訴えた。途上国を益々窮乏の淵へ追いやる現行制度の改善がドーハ・ラウンドであり、絶対このチャンスを逸することはできないと述べた。ドーハ・ラウンドは極限にあり、途上国では経済問題を超えて政治と社会問題へ飛び火した。WTOが了承取り付け主義で優柔不断な態度を採り続けるなら、交渉では収拾できない事態に至ると警告した。
現在我々は円熟した政治家として会議に臨んでいるが、我々が抱えている問題が何であるか、どこまでが忍耐の限界かを知っている。人間であれば良識と情愛もある。国際政治は理屈だけでなく、人間味も必要である。WTOの了承取り付け主義はキレイゴトで、全てを打ち壊す危険性もはらんでいると大統領が獅子吼した。