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岐阜県=デカセギ子弟教育に本腰=調査団を派遣し実状視察=外国人児童生徒連絡協議会発足へ=県人会も全面協力誓う

2006年2月17日(金)

 デカセギ子弟の教育に関して、県レベルで真剣に取り組む動きが岐阜で出てきた。一般的に義務教育は市町村単位で行われるため、県レベルが動くことは全国的に珍しいという。十四日朝来伯した岐阜県ブラジル教育調査団(宇野秀宣団長)三人は、四校を視察するなど精力的にスケジュールをこなした。十五日午後、岐阜県人会では記者会見が行われ、「外国人児童生徒にも日本人と同様の教育を与えなくては」との強い意気込みが語られた。
 この四月から岐阜県では、外国人児童生徒適応指導員が五人配置されると同時に、外国人児童生徒連絡協議会が発足する。これは、優秀な人材確保やブラジルの教育事情に関する情報提供などの面で、ブラジル県人会と連携して進められる。
 宇野団長(49、県地域計画局国際室長)は「現場レベルからSOSの話が出てきたので、心配して、現地を見てくることになりました」と、今回の調査がはじまった動機を明かす。
 一行は十四日に来聖し、私立ミッション学校、松柏学園・大志万学院、州立学校などを視察。サンパウロ総領事館も訪問、そのほか教育事情に詳しい松酒早苗クリスチーナさんらから話を聞いた。
 小林直樹副団長(53、県教育委員会教育総務課)は、一番印象に残った事象として「ブラジル社会の階級や経済格差は創造以上」との印象をあげた。「文化が日本とはまったく違う。子どもは強く自己主張する。日本の教育現場から上がってくる、教師の抱えるストレスの意味が分かりました」としみじみ語った。
 日本では禁止されているが、当地では小さな子どもがピアスをしたり、髪の毛を染めたりすることが普通に行われていることにショックを受けたようだ。
 日本の学校では多くの教師が、問題が起きたデカセギ子弟の両親と話すために、市の通訳が連れて、残業から帰ってくる両親を待ち家庭訪問している。「そうなると、終わるのは夜十時、十一時。教師も疲労がたまってしまう」などの深刻な状況が生まれている。
 岐阜県内には五万人を超える外国籍者が住んでいるが、うち一万八千人と三分の一以上はブラジル人。中国人を抑えて一位。ブラジル教育省認可のブラジル人学校は四校で、公立学校には千人以上の外国人生徒が通う。日本語指導の必要な生徒は昨年四月現在で四百九十一人おり、ブラジル国籍生徒は三分の一以上を占める。可児市をトップに美濃加茂市、大垣市に集中している。
 現状の義務教育では、外国人児童生徒は成績に関係なく、自動的に卒業資格を得られ、日本人とは扱いが異なっている。
 その点を問うと、宇野団長は個人的な意見と前置きしながら、「日系ブラジル人が日本社会を下支えしてくれている。同じ県民、市民として受け入れていく必要がる。全ての子どもには、教育を受ける権利が保障されている。外国籍だからといって、ほおっておいていいということはない」との認識をしめした。
 伊藤慶和調査員(45、県教育委員会学校政策課)も「定住するのか、帰国するのかで学校の対応も変わってくる。その辺、途中で親の考え方が変わる場合が一番、対応が難しい」という。
 来年から日本の文部科学省も外国人児童への支援事業に力を入れる方向性を示しており、県としても本腰を入れて取り組む。山田彦次県人会長も母県の意向を受け、全面的な協力を申し出ている。