ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 負けるなブラジル=中国、インドは不敗選手ではない

負けるなブラジル=中国、インドは不敗選手ではない

2006年2月22日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】ベストセラー「世界は板状」の著者トマス・フレドマン氏が、現在の情勢は十の力が影響を及ぼしているという。一はベルリンの壁崩壊。二は光ファイバーの出現。三はインターネット。四はプロバイダー。五はソフトウエア。六はコード・システム。七は国境を越えた下請け制度。八はオフショアリング。九はロジスチック革命。十は労働システムの変革を挙げた。
 国際経済研究所(ICONE)のサワヤ・ジャンク教授は同書を一読後、前世紀は海中に潜んでいた中国とインドという鯨が、長い間ブラジルの後塵を拝したのに今は前方を走り、ブラジルは中国とインドの後塵を拝することになった理由がよく分かったと述べた。
 ダヴォスの経済フォーラムでも話題は中国とインドでもちきり、ブラジルは完全に忘れられた。ブラジルが先頭に立ったBricsは、いまやCirbsに換えられた。同著書が最も強調するのは、情報と投資のグロバリゼーションだ。
 その結果として有利さの比較と労働の色分け地図が描かれた。同地図で企業の開業コストや優秀な人材の有無が、肌身に感じて分るという。現在起きている現象は、低所得者を急減させ、消費市場を急拡大しているという。
 さらにこの現象はグローバル化の中で技術革新を行い、新製品や新サービスを次々と生み出している。例えば欧米とアジア十五カ国の四百社が、ジャスト・イン・タイム方式のもとに一糸乱れず機能していること。十五歳の誕生を迎えるメルコスルには、爪の垢を煎じて飲ませたい位だ。
 疑問とする部分もある。大海に出てきた二匹の鯨を不敗のチャンピオンと呼ぶには時期尚早である。ようやく卸市場と小売市場の整備は整ったが、不透明な部分が多い。中国独裁政権下の司法制度、憲政政治、環境規制、行政の透明性、汚職対策などだ。インドも問題山積の国である。
 二十一世紀に入って六年が過ぎたが、人類はまだ多くの荒波を被る。板状の世界には所得格差が益々拡大し、限界状況に追い詰められている人達が多すぎる。治安の収拾がつかず、独裁性への移行が懸念される国や紛争とテロに明け暮れている国が多い。
 聖者を風刺したとして宗教紛争に発展しつつあることや、本人は意識していないが米政府の対外政策は誰がみても変だ。これらの要因も含めると世界は板状か球状か、誰がどう判断して決めるのか分からない。
 アジア地域の急成長の手前、ブラジルの役目は何か。世界が益々薄い板状となるなら、農産物や鉱物資源、エネルギーの需要が増えるに違いない。大地に根付く肥沃地や水、熱帯農業技術などの天然資源は、日々需要が増す。
 天然資源に知恵が加算されれば、ファッションや化粧品、音楽、ソフトウエアなどの分野も有望だ。しかし、ブラジルには天敵もある。国内産業を平気で犠牲にし、輸入代替を是とする時代遅れの考え方だ。
 ブラジルが中国やインドに遅れをとった理由は、選手よりも試合ルールにあるといえそうだ。資本コスト削減と為替、労使関係などのマクロ経済改革にある。これを改善しないと、まだ中国やインドの後塵を拝することになる。