2006年2月22日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】ブラジル政府は一日、亜国へ一方的に有利なセーフガード(緊急輸入制限)を呑んだ。名づけて、競争力に応じた按配システム(MAC)という。いままで付き合ってきた恋人のムリを聞いてやったのだ。
亜国市場のぜい弱な分野を、ブラジル製品から守る図式とされる。現実には、亜工業に競争力も意欲向上もない。メルコスル協定をかなぐり捨て、時代を逆戻りするような保護貿易へ亜政府の女性通産大臣はシフトしたのだ。
呆れるのは何の前相談もなく一定期間、被害を受けた分野に即時輸入制限を設けたことだ。被害とは亜国側の一方的判断で決め、検討の余地はない。メルコスル協定など、あって無きに等しい。関税協定もWTO(世界貿易機関)規定より厳しい勝手気まま。
テニスでいうなら、いつもコテンパンに負けるので勝手に自分のラインを書き換えたようなもの。三年間だけ辛抱してくれという。それではメルコスルそのものはどうなるのか。
これまでにも臨時措置として、何度も亜国のわがままを呑んできたがキリがない。自動車協定の譲歩のように、臨時措置がいつまでも延々と続くのだ。
輸入制限条項には、輸入に対応できるように亜産業を指導するというが、具体的なことは何も書いてない。どう指導し、どう管理するのか空手形である。こんなマヌケな作業をしていて、何が望めるのか。
生産性向上と競争力強化のための先行投資に、亜国はあまり頭が働かない。ブラジルが亜国攻めから降りても、アジアが手ぐすね引いて待っている。それは繊維や靴、消費財で証明済みである。伯亜両国は通商互助協定を結んだが、空回りをしている。
亜国は事あるごとに、ブラジルがメルコスルで最も恩恵を受けているという。ブラジルの対メルコスル輸出は十一年間に六〇・三%増加というが、全輸出に占めるメルコスルへのブラジル輸出は年々減っている。亜国の立脚点は、土台からおかしいのだ。
ブラジルにとって亜国は、ソロソロ飽きがきた恋人であるうえ、セーフガード(制限)までいい出したのだ。こんな恋人に金をつぎ込む気になれるか。ブラジルではメルコスルへの投資は過去の話となりつつある。