2006年2月24日(金)
と言う理由で、今年の大統領選挙の見所といいますか、勝利の秘訣は、予選投票の段階にあると判断されます。ただ、その点に就いては、有力伯字紙とかTVの有力な解説者クラスもまだ指摘していない模様で、私の不勉強とか独断偏見かもしれません。いずれにしても、予選投票の動向が戦いの行方の重要な要素になるような気がします。
そして、二〇〇二年よりももっと手に汗を握る大変な激戦を展開し、見る側にとっては、大変面白い展開になりそうな予感がします。ブラジルは、名物のカーニバルやフットボールの覇者を決めるコッパをご覧になっていてもよくお判りの通り、総じて明るい楽しいお国柄ですが、選挙戦の時だけは、相手を罵り合い、足を引っ張り合う泥仕合もしばしば見られます。
例えば、最も予想が当たると定評のあるDataFolhaという世論調査会社が行った昨年末の調査結果では、決選投票の段階での支持率がセーラ候補の五〇%対ルーラ候補の三六%で、一四ポイントという大きな差が付いていました。今年二月一日から二日にかけて行われた今年最初の世論調査の結果でも、四九%対四一%で同じくセーラ候補の勝ちという結果が出ていますが、その差が次第に縮まって来ている様子です。
ご参考までに、時の政権と政権与党を巻き込んだこの国の史上最高の大型不正汚職事件が実際に存在すると、この世論調査で回答した有権者は、八二%にも上っており、また、ルーラ候補に対する拒絶率、つまり「この人には絶対投票しない」と答えた有権者の拒絶率も、昨年末の三六・七%内外から次第に後退する傾向を辿りつつも、まだ、三二%程度の高水準を保っている模様です。
もう一つの大手の世論調査であるIBOPEによる昨年末の調査の時点では、ルーラ候補が第一位、今年最初の調査では、セーラ候補が逆に首位に立っていて、同じように、大変な激戦が予想されます。総体的にルーラ候補の支持率がかなり急速に回復してきている様子が伺えます。しかし、セーラ候補もそれなりの強味を相変わらず発揮している感じがします。この二つの世論調査に限らず、この国の他の世論調査も総体的によく的中するとの評判があります。
昨年末と今年最初の世論調査の結果を見て、一部の有力な観測筋は、メンサロンと言う闇の中の政治買収資金をやり取りしている内に、抜き打ち的に暴露されてしまい、ブラジル史上でも最高規模に達してしまった今回の超大型の不正汚職事件から時の政権と政権与党であるPTの受けたダメージがやっと底入れし、漸く立ち直りかけ、事件前のルーラ候補の支持率の水準に戻りつつあるといった見方をしています。
しかし、私は、ブラジル国民と言うのは、元々、判官贔屓という性格があり、弱い立場に立った者を応援するという、日本人によく似た物の考え方なり習慣(文化)を併せ持っていますので、それがたまたま今回の世論調査の時点で反映されただけであり、選挙を巡る本格的な戦いは、やっとその出発点に立ったばかりだという風な認識の仕方をしているところです。
■今年の大統領選挙をこう考える=赤嶺 尚由(ソール・ナッセンテ人材銀行代表)=連載第1回