2006年2月25日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】連邦最高裁(STF)は二十三日、殺人罪や婦女暴行罪などの重罪犯が全刑期中禁固に処されることは基本的人権に抵触するとして、六票対五票で同法の改正を決定した。重罪犯は受刑後の服役状況によっては、情状酌量の余地があり、減刑の対象になり得るという。この見解が認められ、刑期の六分の一を服役後、受刑者は日中会社に勤務し、夜間服役の日帰り制へ変更を申請できることになった。サンパウロ州の場合、受刑者十二万二千人の三五%は、重罪犯として服役中。そのうち何人が六分の一を終了したか当局は公表を拒んだ。
服役者は全国で、三十四万二千七百七十四人いる。重罪法は一九九〇年、コーロル元大統領によって制定され、刑期が延長された。同法の対象は、残虐な殺人や強盗殺人、脅迫殺人、拉致殺人、婦女暴行、見せしめ虐待、病原菌移植致死、公文書偽造、汚職、医薬品変造、拷問、麻薬密売、テロ、集団射殺など。
同法はこれまで刑期の三分の二を服役後、条件付仮釈放とした。表決の結果、衝動殺人の一般犯罪同様に重罪犯も刑期の六分の一服役後、日帰り服役制を申請できる。日帰り服役中、年に五日は家族との団らんが許される。日帰り勤務する企業がない地方では、自宅での労働や勤労奉仕を行い、夜間だけ服役する。
同法の改正により、受刑者三十四万人の多くは、他人の目をはばかることなく晴れて妻に会えることとなった。恩典を受ける受刑者の多くは、麻薬密売関与で服役していた者。これで超満員と禁欲生活でストレスを貯めていた服役者は、ソトの空気を吸えることになる。しかし、恩典が刑期の六分の一終了者全員へ自動的に付与されるものではない。判事の審査後に可否が決定される。
児童売春で十二年三カ月の禁固刑判決を受けた牧師が、人身保護令の適用を申請したことで重罪法の改正を最高裁が取り上げた。最高裁では二〇〇三年以来、同法の改正が検討されては中断されていた。ようやく二十三日、同法が連邦令に提示された基本的人権に抵触するという結論に至った。
政府も、刑務所の飽和状態から減刑法の起草を急いでいた。同法の改正が行われても一律同様の適用ではなく、段階的な個人別適用になると関係者はみている。日帰り制とはいえ、社会復帰する受刑者を社会がどう迎えるか反応が注目される。受刑者が服役中に受けた拷問について社会はどう感じているのか。
女優ダニエラ・ペレスさんが一九九二年に惨殺されたことで、母親の作家グロリア・ペレス氏は、人命軽視こそが違憲であると訴えた。犯人は禁固十九年の判決を受け、三年二カ月が過ぎたので改正後の同法の適用範囲にある。他人の生命を奪った殺人犯の基本的人権をいうのは、連邦令の曲解だと同作家はいう。
刑執行局は、恩典適用申請のなだれに備えている。適用を受けた受刑者が大挙、社会に帰ってくる。服役者は刑務所の掟をよく知っていて、職員の手前だけ上手に繕う。刑務所内では模範囚でも、刑務所の掟と社会の掟は違う。これから、社会に黒い霧が漂うと思わねばならない。