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西村農工学校=芸術品置く図書館オープン=俊治氏の蔵書1万冊で井上由巳子さんが整理=「本の中に宿っていた魂が息をしはじめた」

2006年2月25日(土)

 サンパウロ州ポンペイア市の西村農工学校(パウロ・マルケス・ベアト校長)に、同校創立者西村俊治氏の蔵書約一万冊を所蔵する図書館が二十日に開館した。午後七時にはじまったイナウグラソンには、学校関係者のほか、授業開始を翌日に控えた新入生を含む同校学生、祝福に訪れたアラサツーバ竜鳴和太鼓グループら、約百五十人が参加した。同校の運営は西村俊治技術財団(西村俊治代表)。
 ベアト校長に続いて挨拶にたったのは、この半年間、図書整理を任されてきた井上由巳子さん。彼女は、昨年六月までJICA派遣のシニアボランティアとしてアラサツーバ日本語学校で指導にあたっていた。帰国寸前に西村俊治氏を知り、「このままだと自分が死んだらただのゴミになるかもしれない」と蔵書の整理を依頼された。
 経験がないことを理由に最初は断ったが、西村氏の人柄にひかれて結局は引き受けることに。九月の再来伯後は、心配したとおり苦労することになったが、現地スタッフ二人の協力を得てようやくこの日を迎えることになった。
 図書館は「図書」「雑誌」「写真」の三つの収蔵室と、ビデオ鑑賞などの場にする計画だという「集いの間」、西村夫妻が特に愛着を持つ本を一棚分だけ置いた「祈りの間」に分けられている。大半は日本語図書。本のテーマは宗教・農業・機械・移住・文学など多岐に渡っており、なかには西村氏による書き込みや傍線のひかれたものもあるという。
 ユニークなのは、各部屋に配置された絵画やオブジェだ。美術に造詣の深い井上さんがブラジル生活で出会った小原久雄(故人)、弓場勝重、金子謙一、鈴木章子、佐々木克さんらの作品が提供されている。
 図書整理の実務は、現地スタッフに頼ることが多かったというが、施設の構成や各所のオブジェは、紛れもなく井上さんならではのセンスが光る。一般の図書館とは異なった雰囲気を持つおしゃれな空間になっている。
 「本の中に宿っていた魂が図書館で息をしはじめた」。一仕事を終え、来月早々には帰国するという井上さんは満足そうに語った。帰国までの仕事として、西村氏の蔵書を通して存在を知り、西村氏と親交もあったコロニアの重要人物にかんする資料ファイルを作ることを計画しているという。
 利用にかんしてはまだ検討中とのことだが、できれば一般公開も考えて欲しい図書館といえそうだ。