2006年3月2日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】ルーラ大統領は二十八日、国内観光の振興政策の一環として超安値のパック旅行を提供する意向を明らかにした。大統領はこれまで「善意のパッケージ」として貧困層向けの貧困家族手当などを実行に移してきたが、今回の措置もその一つで、CおよびDクラスと呼ばれる低所得を対象とした。政府としては四月実現を目途に詳細の調査に入った。
この階層はルーラ大統領の支持が最も高いことから、今年の大統領選をにらんでの措置ととられているが、関係者ではいくら超安値とは言え、旅行する程の余裕があるか疑問視する向きも多い。
今回の措置の底流には政府が掲げた二〇〇七年までに国内旅行者を二千万人にすることがあり、パック旅行は月収八〇〇レアルから一一〇〇レアルの低所得者に三日ないし三十日間の超安値を提供しようというもの。
これには航空会社、ホテル、旅行代理店が参加、大統領の肝煎りで、観光省と打合せを行ってきた。飛行機およびホテルはシーズンオフを開放してコストぎりぎりの値段を提供、これに旅行代理店が観光などの安いツアーを加える。この間飛行機は月間一二万席、長距離バスは六〇万席を確保していく。飛行機は需要の一五%に相当する。
観光省では取りあえず予算一二〇〇万レアルを計上、具体策が出る都度、計上額を増やすとの態度を示しているものの、技術的な問題から実施は八月ごろと見ている。これに対し旅行代理店筋ではシーズンオフに入る四月には実現させたいとして、具体案を早急に提出するとの意向を示している。
これに加えてルーラ大統領陣営は、これまでの「善意のパッケージ」宣伝も怠りなくアピールしている。いわくIMFを始めとする債務の前倒し返済、最賃の四月から引き上げ、個人所得税の減税、インフレ整備、貧困家族一一二〇万世帯への手当支給、一三万人の大学生への奨学金支給などだ。
こうした動きに反し、高所得層はドル安を追い風に、海外に草木もなびく様相を呈している。今年一月のブラジル人の海外での出費は三億九七〇〇万ドルに達し、昨年同月の三四%増となった。外国人のブラジル国内旅行で落としたドルは一月に史上最高の四億二〇〇万ドルで、昨年同月の一八%増になったにもかかわらず、出費との対比でわずか五〇〇万ドルの黒字にとどまった。昨年一年間での海外での出費は四七億二〇〇〇万ドルで、観光経常収支は八億五九〇〇万ドルの赤字となった。