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県連・第24回移民のふるさと巡り=ノロエステ巡礼=連載(9)=トレス・ラゴアス=大阪市より大きい牧場?!=オンサと〃牛〃種のるつぼ

2006年3月2日(木)

 最終日の三日目、午前中はジュピア・ダムの見学だ。堤防の長さは約五千五百メートルもあり、サンパウロ州と南マット・グロッソ州をつなぐ橋の役割も果たす。
 ダム見学後、いったんホテルで休憩し、午後一時過ぎにトレス・ラゴアス日伯協会(大坪シュンジ会長)の会館へ到着。サンパウロ市から西北西に約六百五十キロだから、東京・青森間とほぼいっしょ。南マット・グロッソ州側の人口十万人弱の町で、州都カンポ・グランデまでは約三百三十キロ。ここまで奥地に入ると、州都へいくのとバウルーへ出るのと変わらない位置になる。
 さっそく同地の副市長、大坪ルイス・アキラさん(42、三世)から、「州都に次いで、日系人の存在感を示している町です。暑い町ですが、ようこそ」と歓迎のあいさつを受ける。
 彼の父親は、南マット・グロッソ州議会でも最長の任期、九期を誇る州議の大坪アキラさん(68、二世)だ。ルイスさんは「たくさんの日系人がデカセギに行ってしまい、ここの会員は百六十五家族しかいない」となげく。加えて、非会員の日系家族が二百はいると推測している。
 大坪会長によれば会の創立は一九六二年で、この会館は八一年に建設した。元会長の三浦ジュンイチさん(67、二世)は、五六年からこの町に住んでいる。「あの頃、日系人は三家族しかいなかった。アスファルトの道なんてなかった」と懐古する。
 カラオケ、ゲートボール、盆踊り、忘年会、父の日、母の日、運動会など一通りの行事はみなそろっている。中でも盆踊りは毎年六月の市制記念日に実施し、一晩で千人以上が集まる、市でもっとも大きなイベントの一つになっているという。
 一行は、ピアオ(Piao)という川魚のフライなど、婦人部手製の食事をふるまわれた。
 同市とアグアス・クラーラス市の間には、有名なサンヨー牧場(中島宏社長)がある。六二年に創立され、現在では三万六千ヘクタールの面積があり、そこに牛一万六千頭を飼っている。これは大阪市(二万二千百三十ヘクタール)より大きい。東京二十三区は約六万二千ヘクタールだから、その半分以上を占める面積だ。
 元同文協役員にして、サンヨー牧場で牛の世話全般をになう戦後移住者、小畠忠雄さん(62、京都)は、スイス、北米、仏、英、伊、日本と牛のタイプを指折り数える。
 「ここには世界中の牛が集まっている。交配が進み、人間と同じようになっている」と、人種のるつぼ、多民族国家ブラジルの現状に例えながら笑う。
 「今でも毎年、オンサ(ジャガー)に子羊二十、三十頭はやられてるね」となにげなくいう。「牛でも二百キロぐらいまでなら、やられることがある」とも。さすがに「Terra do Rei do Boi(大牧場王の土地)」と形容される、国内で牧畜の最も盛んな土地なだけある、と妙なところで納得。
 確かに治安の問題が少なく、見わたす限り、まっ平らな土地が続く。ただし暑い。「日陰でも四十度いきます。日なたなら、目玉焼きでもできるんじゃないですか」と小畠さんは笑う。
 午後三時、一行は地元のみなさんと「ふるさと」を大合唱、「トレス・ラゴアス、バンザーイ!」と三唱してからバスに戻り、旅の最終目的地、ペレイラ・バレットへ向かった。
(つづく、深沢正雪記者)
  □訂正□
 連載『ノロエステ巡礼』第八回に清水秀策さん(65)とあるが(72)の間違い。訂正します。

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