デジタルテレビ=日本方式採用濃厚に=大統領が気に入る=既存ネットワーク活用の利点=高額投資、技術移転のオマケも
2006年3月9日(木)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙八日】日米欧間のロビー活動により長い間議論が交わされたデジタルテレビは、ルーラ大統領による鶴の一声で日本方式の採用が七日、濃厚になった。最終決定は十日に発表される。デジタル用のチューナーが不要な日本方式により、現在使用中のテレビ受信機でも長期間視聴が可能なことが、大統領の好感を呼んだようだ。日本方式の採用には設備投資が高額になることで、日本代表団は半導体とプラズマテレビを現地で生産するため二〇億ドルに上る投資を示唆した。大統領選挙の年に不利な選択という杞憂もあるが、最終的には国益に叶うという。
デジタルテレビの方式選択には、日米欧の三つ巴戦が繰り広げられてきた。電話企業などが欧州方式を推奨する中、既存テレビ・ネットワークを活用する日本方式採用するよう大統領から要望があったようだ。選択の交換条件として提供された日本代表団の設備投資について、ロウセフ官房長官とコスタ通信相、関係者は詳細の詰めに入った。
二〇億ドルに上る日本側の投資が実現すると、ブラジルはトランジスターやマイクロプロセッサーなどに使用される半導体や、夢のプラズマテレビも現地生産に踏み切る。選挙の年には不利な選択と思われるが、関係閣僚の説明を受けた大統領は四日、日本方式採用の意向を表明した。
日本からの投資には、技術移転のオマケが付く。大統領は、アナログテレビの併用が可能であることが気に入ったと側近に漏らした。欧米側は、欧米方式への変換が短期に行われることを強調した。日本方式は反対に、九〇%以上が家庭用である途上国のため長期的変換へ重点を置いた。
長期的変換はコード切り替え用のチューナーやデジタル専用テレビの購入を急ぐ必要がないため消費者にとって負担が少なく、既存のアナログテレビの併用が可能である。一挙にデジタル・ネットワークの立ち上げを困難視する既存チャンネルも、日本方式採用にサインを送った。
大統領にとっては再選に賭けた計算があったが、ブラジルの既存テレビ・チャンネルは日本方式にこだわった。ブラジルのテレビ・システムが一挙にデジタルに変換されると、多国籍チャンネルの侵略を受けることになる。日本方式を採用すれば、ブラジルのテレビ放送は既存チャンネルの天下という読みだ。
政府には、国内のエンターテイメント(大衆娯楽)産業を世界の最先端にまで育てるという基本戦略がある。そこへデジタルテレビの生産に、日本が投資するというのだから渡りに舟だ。
労働者党(PT)内には、電話網を押さえる欧州勢にテレビ網とそれに伴う一連のサービスも一任するという考えがあった。コスタ通信相は古巣TVグローボの意を受けて、日本方式が技術的に欧米方式よりも優ると力を入れていた。
米国方式は、技術移転を拒んだので最終的に選択から外された。ブラジルでテレビ受信機を生産する米企業は、単なる組み立てだけで肝心の部品は輸入させる。日本は半導体を現地生産させ、技術と資本を提供するという。最上のヒレ肉をご馳走するというのだ。