2006年3月10日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】下院本会議は八日、裏金関与で告発されたブランチ下議(自由前線党=PFL)とルイジーニョ下議(労働者党=PT)の議員権継続に関する表決を行ったところ、賛成多数ではく奪は否決された。両下議の関与疑惑は、CPI(議会調査委員会)で決議され、下院倫理委員会へ議員権はく奪の提議が行われていた。表決に先立つ議会工作で、与野党は両下議の議員権保留を取引した。裏金疑惑でブラックリストに掲載された下議は、十九人。うち二人ははく奪、四人は辞任で放免、二人は無罪、さらに二人が議員権はく奪から解放されたことになる。
現代版「宗教裁判」ともいわれるCPIと倫理委の関門を潜り、野党のブランチ下議と与党のルイジーニョ下議二人が議員権はく奪から救われた。二人の放免はこれまでのいわくつきではなく、与野党合意による裏金疑惑からの解放である。表決はブランチ下議が無罪に賛成二百八十三票、反対百五十六票。ルイジーニョ下議が賛成二百五十三票、反対百八十三票であった。
ブランチ下議は、野党で唯一人裏金疑惑に関与した議員であった。同下議はもう選挙には立候補しないが輪廻転生が可能なら、また政治家になりたいと述べた。同下議はミナス・ジェライス州出身、街角クラブの創立者というニックネームがある。ミナス州で七〇年代に素朴な民族音楽で一世風靡した作曲家フェルナンド・ブランチ氏の弟になる。
裏金疑惑でPTの被告第一号となったルイジーニョ下議は、せっかく議員権はく奪から助かったのだから十月には出直し選挙に挑戦するという。同下議の事務員がルラル銀行でヴァレーリオ氏から二万レアルを受領し、事務員の判断で市議らに配給したらしい。本人は全く関知しないという。
両下議が政治力と統率力に秀でて有能な政治家であることから、与野党執行部は議員権はく奪から免れる方法を模索し、救出票交換の取引を行った。与野党の交換取引に対しては、全員救出もやりかねない恥も外聞もない政治倫理の不在だと激しい非難がある。
前代未聞の裏金スキャンダルが与野党の合意取引で決着したことは、ブラジル政治史上の汚点となりそうだ。裏金疑惑が議会と大統領府、政党の信用を著しく損ねたことは、一九九三年の国家予算をごまかした「北東部の小人」疑惑の比ではないとされる。
国家予算CPIでは、大物下議五人が政治生命を絶たれ政界から消えた。下議四人が辞任。下議八人と上議一人は、辛うじて虎口を脱した。郵便局CPIは四人を辞任に追い込んだが、議員権はく奪はジルセウ前官房長官とジェフェルソン前下議の二人のみ。
裏金疑惑の十九人のうち、九人が白洲で裁きを待っている。また郵便局CPIの上程者セラリオ下議の報告書では、十一人が俎上にある。郵便局CPIは国家予算CPIほどの大手術とは行かないが、数多の大統領側近や公社役員を引きずり出したことで揺さぶりを掛けた。
政府は政治危機で、要人や高官四十人を失った。その中にはジルセウ前官房長官や郵政公社、造幣局の役員多数、連立党や与党PTの党首ジェノイーノ下議やジェフェルソン前下議、アゼレード下議、コスタ前下議、コレイア下議など五人がいる。