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選挙予測記事の連載を終えて=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載 (上)

2006年3月10日(金)

 今年十月一日に行われる四年に一度の大統領選挙の一番の見所とか注目される争点は、〈腹の問題〉と〈頭の問題〉が激しい衝突やぶっつかり合いを演じた結果、どちらの問題が勝つかにある、と考えられます。
 言わずもがなのことですが、〈腹の問題〉とは、この国でもう数千万人にも達している貧困階層の人たちを如何にして食べさせて行くか、という長年に亘って続いてきた課題だという風に理解されます。最低賃金以下の収入しかない階層が全人口の約半分も占めているとの統計が出ているだけに、この問題は、年を追って深刻化しています。
 まず、現役のルーラ大統領が再選続投を狙う上で、当然自分の守備範囲の中にある〈腹の問題〉に対して、やがて始まる選挙運動中に、果たしていかなる効果的な解決策を提示して行けるかどうかが再選続投を目指す上でのもう一つの重大な関心事になる、と言えるでしょう。
 四月一日から前倒し式に実施に入る最低賃金にインフレ上昇分を差し引き実質で約十一%のかなり思い切った引き上げを認めたことと、やっと軌道に乗り始めた月平均六十レアル程度のボルサ・ファミリアル(家族支援金)の支給が大きな選挙効果を上げることは、確実です。
 ただ、それだけでは、何時までも釣ってきた魚だけを与えてやるような単なる一時しのぎの救済措置にしか過ぎず、本当の〈腹の問題〉を根本から解決するには、常に年率で四、五%台の経済成長を達成し、雇用促進から所得の分配や貧困対策へと循環的に繋いで行く必要性が指摘されています。
 しかし、現実の問題として、これまでの異常な高金利政策の下では、金融機関だけが数十億レアルという巨額の経常利益の記録を年々塗り替え、結果的に生産活動や経済成長そのもの足取りを反対に引っ張る形になっています。ルーラ現大統領が野党時代に一貫して金融機関を貧しい大衆の目の仇として敵視し、又、初当選を目指して戦った時に掲げた〈暮らし易い公正な社会を建設する〉という、あのいかにもおいしそうなムダンサ(変革)の公約との整合性をどうするかといった問題にも、改めて納得の行く説明責任を求められそうです。
 これに対して、ただ今の〈頭の問題〉とは、この国の歴史上で最大規模に達してしまった今回の不正汚職事件の真相を更に追及すべきかどうかをまず一般国民の頭と心の中にある〈憂国の情〉に訴えることだと判断されます。そうするためには、決選投票でルーラ現大統領と対峙してその再選の芽を最も摘み取る可能性を秘めていそうなセーラ現サンパウロ市長が正式にPSDBを中心とする野党連合の公認候補に選ばれ、まとまった野党陣営の戦いの陣形を敷けるかどうかが重要な鍵となります。
 晴れてセーラ野党候補が誕生した暁には、一般大衆の味方を自認したかつてのPTが〈盗まない、盗ませない〉をうたい文句に不正汚職への防波堤になっていた筈なのに、政権を手中にすると同時に、史上最大の不正汚職事件を引き起こしてしまったその矛盾性を鋭く衝くような作戦を徹底的に展開し、今一度、政界のリンペーザ(清浄化)を図る必要性を訴える作戦に出ることが予想されます。

■今年の大統領選挙をこう考える=赤嶺 尚由(ソール・ナッセンテ人材銀行代表)=連載第1回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソールナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第2回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第3回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第4回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第5回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第6回