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25年=交流協会生コロニアと共に=25期編3=連載(13)=過酷な渡伯前の研修=毎年、協会方針に疑問持つ人も

2006年3月11日(土)

 五十冊分の読書感想文を書き、百キロ歩かなければ、ブラジルに行けない!?交流協会の制度には、事前、事後研修があり、この「事前研修」のプログラムに研修候補生は、毎年頭を抱える。これだけではない。ブラジルでの個人研修テーマの作成、新聞記事の要約など、毎月必ず提出することが義務。遂行できなければ渡伯できない。
 七期生(一九九七年度)からは、大学にポスターを貼るなど積極的に広報活動を行い、八期生(九八年度)は三十六人と増加。日本での事前合宿も行うようになった。これは渡伯までに東京で三回行われる。
 第二回合宿では名物「百キロハイク」が慣行。「全員完歩」を目標に東京から、神奈川県にかけ百キロという長距離をグループに分かれて約二十四時間、夜通し歩き続ける。「何でここまでしてブラジルに……」「何がなんでもブラジルに行く」などの想いを、それぞれが体力、精神とも極限状態になる中で考える。また、自分やほかの研修生とも向き合う機会。中には、どうしても歩けずにリタイアしてしまう者もいる。十一月後半という寒い時期。吐き気、足の痛さ、眠さなどと戦う。
 現在はなくなったが、りんご一個と水だけで四十八時間過ごすというプログラムもあった。ビニールシート、ろうそく、小刀、ノート、鉛筆が支給され、それぞれ山中湖の野外で一人きりになりその時間を耐える。「みんな、洋服に食べ物とかいろんなもん隠し持っていくんだけど、全部事前にとられるんだよ」とOBたちは思い出して笑う。
 「この事前研修にどう取り組むかによってブラジルでの一年が変わってくる」。事前合宿での玉井義臣会長ら役員の講話で度々耳にする言葉だ。決められた本の中から五十冊を選出し、感想文を書く。辞職して研修に参加する人も多く、彼らにとっては過酷な課題だ。
 本は、ブラジル関係の書籍ばかりではなく、日本文化、日本の歴史、禅、茶道、武士道など圧倒的に「日本」についての本が多い。「しっかりした日本人になって外国に行ってもらう」ということが目的だ。
 しかし、あとがきだけ読んで要領よくこなす者がほとんど。OBはもちろん、研修生が渡伯後感じることは「しっかり読んでおけばよかった」という後悔。ブラジルに来てはじめて「日本」について考え、意識し始める。
 あしなが育英会募金活動も義務の一つ。玉井会長が同会会長でもあるため、奨学生とともに募金を呼びかける。募金までの会議への出席、一ヵ月間の準備なども行わなければならない。全国各駅に立ち、大声で通行人に呼びかける。初めての経験に、始めは不満を抱いていた人も「感動した」と涙する者もいる。最後まで「義務として無理やりやらせる意味がわからない」と言う人も。
     ◎
 二〇〇五年度の応募者は百人を越えた。書類審査、面接で五十八人が候補生に決定。「こんな協会だとは思わなかった」。事前研修の厳しさについていけず、十人が辞退した。残った研修生の中にも、「協会の思想」に共鳴できない者や納得のいかない者もいる。毎年、協会の方針に疑問を持つ人はいるものだ。
(つづく、南部サヤカ記者)

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