2006年3月14日(火)
「九十万円」。この金額が一部から常に疑問視されてきた。渡伯するためには、九十万円を支払わなければならない。「どこにそんな費用がかかるんだ」「詐欺だ」とまでさえ言われている。しかし、一人あたり百万円近くかかっているのが現実だとの説明を聞く。その上、奨学金制度もあり、四十万円を貸し出している。それを利用する人が増えれば資金繰りが悪くなる。
しかし、「疑い」があるにもかかわらず、説明はされるものの九十万円の使途詳細は明らかにされていない。今回調べてみたところ、主に航空運賃、国内研修費、研修生募集費、派遣先交渉交通費、機関紙、協会誌発行費や、青年代表としてのブラジル人大学生の日本への派遣費用。それに加え、必ずかかる費用として、事務局員の人件費、協会の管理費、課題などの郵送代、通信費などがある。
「今年は人数が増え、その分財政的に潤ったと思う人がいるけどそうではない」。藤本明司ブラジル事務局長は説明する。特に航空運賃とブラジル国内研修での宿泊費用。一年間の文化交流ビザを取得しているため、三百六十日オープンになり航空運賃が高くつく。ホテル代も同様。人数が増えたことで宿泊できる比較的安いホテルが少なくなるという問題もある。
モンチアズール住民協会でボランティア活動をする安藤将(36)さん。毎年、同地でも協会生を受け入れていることから、よく事務局にも顔を出す。「世界中旅をしてきたけど、二十五年という歴史のもとに、ここまでサポートできている協会はない」と断言。「旅行代理店みたいになっている留学システムが多いけど、交流協会は住む所も、研修できるところもある。研修補助費も支払われる。何から何まで面倒を見てくれる。逆に言えば利益をとってもいいくらいだと思う」。
一年間を保障されたビザを取ることは難しい。「冷静な判断をすれば、九十万円で一年間日本で生活するのはなかなかできない。しかも、旅行じゃ経験できないことができる」と話し、「人間と人間がぶつかれるのは仕事か学校しかないんだから」と協会への熱い想いをみせる。
◎
「旅行代理店ではない」。事前研修の講義で何度も耳にする言葉だ。「九十万も払ってるんだから良くしてもらって当然と思ってる人が多い」と玉井会長は嘆く。二〇〇七年度からは、赤字からの脱却も課題の一つとされそうだ。
(つづく、南部サヤカ記者)
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