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ボリビア人の憧れ、ブラジル=一旗揚げようと潜入=不法滞在特赦で密入国者急増=借金返済のため奴隷労働

2006年3月17日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】ボリビアからブラジルへの不法入国者が急増している。背景には両国の二国間協定により、八月十五日までの不法滞在者を合法化する旨の特赦令が実施されることで、それまでに入国を果たそうとするボリビア人が急増していることにある。ブラジル人がアメリカで一旗あげるべく不法入国を繰り返しているように、ボリビア人は、ブラジルに憧れをもって渡ってくる。そこにはコヨーテと呼ばれる悪質なあっ旋業者が介在して不当な利益をあげている。またブラジルに潜入したボリビア人は当局の摘発を怖れて奴隷労働に似た扱いを受けている。それはブラジル人が外国で受けるものと映像がダブって見える感がある。
 ブラジル人がアメリカに不法入国を図る際、空路でメキシコを経由してその後は陸路となることから、コヨーテと呼ばれるあっ旋業者が介在する。その費用は約一万五〇〇〇ドルに及ぶ。ボリビアからブラジルへの不法入国も同様の組織があり、パラグアイを経由することから「パラグアイのコヨーテ」と呼ばれている。しかし、費用はまちまちで六〇ドルから二〇〇ドルまである。
 そのほとんどがブラジル側特にサンパウロ市の雇い主が費用を立替え、その後の給与なり賃金から返済する仕組みとなっている。この時点ですでに借金に縛られることになる。
 不法入国者はほとんどがサンタ・クルス市在住で、ここからパラグアイの国境の町シダー・デル・エステに集結し、コヨーテのアジトで交通の便を待つ。待ち時間は二、三日に及ぶこともあり、この間、寝具マットを敷いたのみの一室で雑魚寝となる。あっ旋費用にはその間の食事代も含まれているとの触れ込みだが、食事は支給されない。ほとんどが着の身着のまま、無一文で飛び出てきているため食事抜きとなる。
 国境ではパラグアイとブラジル間の友好の橋を徒歩やオートバイで渡るが、監視が厳しい時はパラナ川を船で渡ることもある。ブラジル領土のフォス・ド・イグアス市からは長距離バスを使うが、身分証明書がないため正規路線に乗れず、専ら担ぎ屋が仕立てるチャーターバスに便乗させられる。サンパウロ市に到着したら組織の一員が雇い主まで案内する。
 法務省では密入国あっ旋は人身売買と見なし一年から三年の刑が適応され、これが組織ぐるみだと五年に延長されるものの、立件は困難だとしている。国境での友好の橋の行来が自由なことと、密入国者の証言を得るのが不可能だとしている。密入国者は兄弟や親族が将来不法入国を希望したり、本人が万が一強制送還された場合にコヨーテに頼る破目になることから、証言には応じないのが実情だという。
 ブラジルには合法滞在のボリビア人が三万二千人強在住し、そのうち二万一千人強はサンパウロ市にいる。これに対し不法滞在者は正規な統計はないものの、六万人と見られ、うち一万人はマット・グロッソ州在住で残りはサンパウロ州に集中している。
 不法滞在者の多くはボンレチーロ区の洋裁工場で、密入国の借金返済と当局の摘発をおそれて終日外出せずに奴隷まがいの労働に明け暮れている。二十八歳の女性は本国で月一〇〇ドルの収入があったが、ブラジルでは倍になるとの甘言に乗せられてやって来た。ミシンを踏む作業は早朝六時から深夜十二時まで続き、借金返済に二カ月を要した。ようやく数カ後に六〇〇レアルの賃金を得られるようになり、それまでの工場での寝泊まりから家族で借家住いを始めた。子供と動物園に行く余裕もでき、ようやく悪夢のような生活から脱出できたと喜んでいる。