先進国に買収で挑む途上国=地元は〃侵略〃とも=中国企業、伯エンジン工場に食指=失業対策にもなり痛し痒し
2006年3月22日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】中国のリファン・グループが、パラナ州で操業中のトリテック・モーターズ買収に食指を動かした。同社はダイムラー・クライスラーとBMWが五億ドルを投じて創立したブラジルのシンボル会社である。商談は保留としたが、ニューヨーク・タイムスが関心を持った。同社は、ブラジルのエンジン生産技術で粋を結集した輸出専用のモデル工場である。中国は同工場を解体し、設備と生産技術を中国へ移転することを考えているようだ。この商談は企業合併や買収における侵略行為とみられている。
米国では英国系の船舶港湾企業が、アラブ首長国連邦のドバイ港湾公社によって買収された。欧州ではインドのミッタル製鉄が、仏系の鉄鋼大手アルセロールの買収交渉を行っている。スペインの電力会社EONが、ドイツにあるスペイン系大手企業エンデーザの買収を申し入れた。
最近、途上国企業が先進国の大手企業買収に乗り出している。米国内では二〇〇五年、途上国企業が一四〇億ドルを投じ九十六社を買収した。欧州では中東や南米、アジアの企業が四二〇億ドルを投じて、〇四年の購入企業数の二倍を買収した。
これらの買収劇は、買収された企業の地元で大問題を起こしている。米議会は国家安全保障に関る大事だとした。ボヤボヤしている間に米国の港湾が全部、外国企業に買収されようとしたのだ。辛うじてニューヨーク港とマイアミ港は、買収を免れた。
欧州ではフランスとドイツ、イタリア、英国が直ちに反応した。ブラジルのように金融自由化と資本の移動に何ら制限をしていない国では、不意打ちを食らったも同然。グローバル化により、多くの人々が予期しなかった方向へ、事態が急速に進んでいる。
ブラジル政府は安全保障と失業、国家主権が中国やインドの経済発展で脅かされていることに気付いた。経済侵略を目的とした外資の流入や製品の輸出に、公社は神経を尖らせている。千客万来の外資導入政策は、条件付き制限付きの外資導入に変り、政府は自由貿易と市場開放に疑問を持ち始めた。
自由貿易市場の中に砦を築き、忍者を送り込む中国の経済戦略に政府は狼狽した。トリテック・モーターズの買収は民間企業間の問題であるので、政府が介入する理由はない。この種の買収劇はこれからひんぱんに起こるが、政府は介入できない。
先進諸国は、戦略的見地からハイテク企業の買収に介入する法律がある。トリテック・モーターズの場合、政府と議会は戦略的見地の他に企業の経営環境も考慮に入れねばならない。ブラジルで営業を続けるのは重税と為替差損のため不利と同社経営陣が判断したら、五百人の従業員は失職し、二億五〇〇〇万ドルの輸出はなくなる。
中国紙に見る中国政府の見方は、同買収が党の方針に合致し、ブラジル政府とも友好関係を築くチャンスを生み出すことで一石二鳥の商談と思っている。ブラジルの安全保障に抵触しないし、国家主権も損なわない。ブラジルの誇りを傷つけないという。
ブラジルは欧米と違い、失業と国策事業の点では鷹揚としている。アレンカール副大統領は二十日、同買収劇で中国を訪問する。副大統領は外交辞令だけでなく本音で、ブラジルの国策と国益を中国政府と議論するはずだ。