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多数決で割り切れないWTO=大統領提案は国際オンチの見本

2006年3月22日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二月十五日】世界貿易機関(WTO)の裁決方式を現行の承諾制から多数決制にするルーラ大統領の提案は、アモリン外相がイタマラチー外交政策の一環ではないと釈明した。途上国にとっての死活問題をWTOが煮え切らないので、大統領が苛立ったらしい。
 多数決制にすれば、WTOにもブラジルにも途上国にも悪くないはず。論理明晰で先進国に説明の必要もないと大統領は思っている。南アフリカ進歩派首脳会議の閉会式で、大統領は貧乏国へより権限を供与する提案だと述べた。
 これまでG8の顔色を伺って小さくなっていた貧乏国代表が、自由に意思表示ができるようになれば目出度しだ。しかし通商交渉の世界は、そんなに甘くない。複雑な国際間の力関係を知らないなら、幻想と思ったほうがよい。
 国際間の力関係は、経済力でも技術力でも産業開発の度合いでも文化の深さでもない。例えばブラジルが打開を目指す砂糖の市場開放と補助金廃止には、ヨーロッパ諸国の旧植民地とのしがらみがある。この問題は、ブラジルには理解が困難と思われる。
 旧植民地の貧乏国が、ブラジルの思惑通りに動くと思ったら番狂わせになる。先進国が貧乏国の票を取り付けるのは、アメを与えて子供を騙すようなものだ。多数決制にすれば勝てると思うのが早計だ。
 WTOの現行システムは、政治力と複雑な力関係を気の遠くなるような時間をかけて承諾を得ながら裁決をしているのだ。WTO加盟百四十八カ国の間には、歴史的関係と政治的関係を持つグループが存在する。これが分らないと、カンクン閣僚会議の愚を繰り返すことになる。
 メキシコのカンクン会議ではEUの最終提案でまとめようとしたが、アフリカ諸国が反対した。その背後には、EUのアフリカ諸国への投資が期待できなかったからだ。アフリカ諸国は透明性や優遇性を求められても、賛成票を投じていたら、経済的にもっと潤ったかもしれない。
 ルーラ大統領はWTOのノロノロ判決にイライラしたらしいが、承諾方式は形式的にも全員の意見を聞く。ブラジルは辛抱強く各国の承諾を待つことで、わずかな交換条件を提供し、農産物の市場開放という大きな見返りをタナボタ式に得る可能性がある。
 多数決方式は単純だが、割り切れない問題では機能しない。まとまりそうなこともバラバラにしてしまう。ブラジルは世界貿易の分野では爪の垢ほどの存在でしかないが、国際交渉の舞台では主役を演じている。調子付くと道化師になりかねない。
 WTOに多数決方式が、ないわけではない。敢えて採用しないのだ。この国際間の仕来りを、大統領は知らなかったらしい。多数決裁決が取り返しのつかない事態を招く危険な賭けであることを各国首脳は知っている。大統領の先走りを_アモリン外相が繕ったことは、せめての救いだ。

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