2006年3月23日(木)
ブラジル日本語センターの通常総会が十八日午後、同センターで行われた。谷広海理事長を中心とする単一シャッパが承認され、谷体制は三期目に突入することになった。その他、日伯大学構想の検討が進められている件や、今年から日本語普及と両輪で、継承日本語教育法の研究に力を入れる方向性が報告された。
「研究」の必要性について小松雹玄さんは、「今まで日本語教育と言えば日本が本家であるとの認識だったが、継承日本語に関しては現場である当地に経験と知見が多くある」との新認識を披露した。その線から考えれば、日本にその蓄積がないことから、「当地で研究や成果をまとめ、それを多くの教師に共有してもらう必要がある」との方向性を説明した。
具体的には、ベテラン教師にテーマごとに集まってもらい、「討論→まとめ→討論→まとめ」という具合に実践報告を積み上げる作業を繰り返し行う提言が行われた。評議員会の矢野敬嵩会長は「日本語普及と研究は、今後の活動の両輪です」と強調した。
その他、「日伯大学」検討委員会を代表して、石田光正委員より活動報告があった。矢野評議員会長が昨年十二月に訪日した折に海外日系人協会で説明したところ、「全面的な賛同を得た」という。中南米全域から学生を募集する構想であることから、「名称は〃パンアメリカン大学〃の方が相応しいのでは」との日本側意見も紹介された。
その後、「範囲が広すぎて、希求する『ブラジルの発展に寄与する』目的が明確にならない」などと議論になり、「日伯大学」に戻った。建物を早急に立てるのでなく、百年後の評価にたえうる内容をもった教育機関とすべく、新委員に加入してもらい、さらに議論を深める方針が確認された。
質疑応答の中で出席した約三十余人の会員の一人、宮崎高子さん(構え学園園長)は「懸賞論文を作って毎年実施してほしい」と提案。谷理事長は「日本語教育研究に含められるものがある。これを検討する委員会ができるよう図りたい」と前向きな姿勢をみせた。
これは橘富士雄理事長時代、九四~九五年に行われたことがあり、当時は総額三千ドル(一~三位)の賞金が与えられた。宮崎さん自身が九四年の一位受賞者で、「すごく励みになって嬉しかった。若い先生の刺激になるのでは」という。
会計に関しては、〇五年の総収入・総支出は百八万レアル(〇四年=百十三万レ)と前年比で約五万レ減となった。収入が減った二つの主たる理由は、急激なレアル高によりJICAの助成金が目減りし、さらにJICAが支給していた教師謝金が昨年から廃止されたことで会費を払えない会員が増えたためと説明された。
総収入の六五%がJICA関連の助成金であることから為替の影響は免れない。田中栄一会計理事は「(収入に占める)会費の割合はわずか一〇%。収入は減、仕事は増と厳しい状況です。どこに資金源を求めるか、みなさんにも考えていただきたい」と意見をもとめた。
教科書の教材販売を増やし、委託販売手数料を三倍に増やすなどの努力にも関わらず、繰り越し金は〇四年度の二十四万レから昨年は六万レに減った。
〇六年予算計画は収入・支出ともに百十万レと昨年並み。会費収入を九万五千レから十二万五千レと大きく見積もり、会員増加への協力を呼びかけた。
〇六年度事業計画では「教師認定制度の確立」が承認された。日本語教師の大半がブラジル教育省の日本語教師資格を有していないことから、同センターが独自に認定証を発行する。「少しでも社会的地位向上に役立てば」と佐藤吉洸副理事長は動機を説明した。さらに「この認定証が公的に認められるように働きかける。ブラジル社会にセンターの存在価値を訴える機会になる」と語った。
そのほか、デカセギ向けの短期日本語コース開設に関しても、百二十人の各地で講座を設ける方針を再確認した。
すべての懸案事項は拍手ですんなり承認された。〇六―〇七年の役員はほぼ現在のまま。理事長=谷広海、副理事長=高橋正剛副、板垣勝秀、日下野吉武、佐藤吉洸、書記=諸川有朋、会計=田中栄一(敬称略)。