2006年3月23日(木)
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の三月定例昼食会が十日、サンパウロ市内のホテルで開かれた。今回はマットグロッソ・ド・スール(MS)州のジョゼ・オルシリオ知事が同州の開発状況と今後の計画について講演したほか、アマゾン協力条約機構(OTCA)のロザリア・セラーノ事務局長が同機構の活動を紹介した。
一九七七年にマットグロッソ州から新設されたMS州の人口は現在、約二百二十万人。牛肉生産で知られる同州では、人口の十倍以上、約二千五百万頭の畜牛が飼育されている。ブラジルの牛肉輸出に占める割合は五割強。養鶏(一日二十五万羽生産)や養殖漁業も盛んに行われている。国内有数の大豆生産地でもあり、農畜産業が州経済の三割を引っ張っている。
知事は同州の農畜産業の現状を説明するとともに、鉄鉱石やマンガンといった豊富な鉱物資源や、州内の水力・火力発電所によるエネルギー供給など、同州の潜在能力を強調。また、南米の中心部に位置し、国内五州、二カ国と国境を接するMS州が、大西洋と太平洋を結ぶ大陸横断輸送ルートの重要な中継点であるとその将来性を語った。
陸の大陸横断ルートは、サントスからMS州のコルンバを通ってボリビアに入り、チリのアントファガスタやイキーケといった港から太平洋に抜けるもの。州内には四つの国際空港があり、またパラナ州境を流れるパラナ川を通ってアルゼンチンやウルグアイに抜けることもできる。知事は同州の輸送インフラの利便性を強調するとともに、同州を経由した輸送が対アジア市場輸出のコスト削減につながると述べた。
知事はさらに、パンタナールやボニートなど州内の豊かな自然環境を利用したエコツリズモの将来性にも言及。また、州内のアルコールプラントが今年末までに三十カ所(現在は十八カ所)に増える見通しであると述べたほか、抱負な鉄鉱資源を利用した製鉄プラントの建設計画が進む現状など、同州の発展をPR。「若いけれども巨大な州、マットグロッソ・ド・スールを見てほしい」と呼びかけた。
日系人の多く暮らすMS州。知事は同州における日系人の貢献を評価した。会場では日本語による州の紹介ビデオが流されるなど、新規投資に対する同州の関心の高さをうかがわせた。
続いてアマゾン協力条約機構(OTCA)のセラーノ事務局長が同機構の活動を紹介した。
アンデスの高地から海抜ゼロメートルの広範囲にわたり、世界の生水の二〇%、世界最大の動植物相を有するアマゾン流域。OTCAは一九七八年、アマゾンの環境保全とともに、持続的な開発と生活水準向上を目的に流域八カ国により設立された。
セラーノ事務局長は、アマゾンの水資源や生態環境資源の利用といった同機構の取組みを説明するとともに、今後の課題として、各国間の規制の統一や国際機構との連携などが必要との考えを述べた。
昼食会ではこのほかに、任期を終えて帰国する石橋隆介JICA聖支所次長と桜井悌司ジェトロ聖事務所長、多田稔・ブラジル三菱商事社長がそれぞれあいさつを述べた。