2006年3月29日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】ジェトゥーリオ・ヴァルガス財団のナカノ教授がブラジル経済をオランダ病と呼んだことで、経済学者らが異論を唱えた。学者らが探しているのはオランダ病の薬でなく、他の治療薬らしい。
オランダ病は七〇年代、オランダが北海ガス田から採掘したガスを近隣諸国へ輸出し、オランダ通貨のフローリンが暴騰したため国際競争力と海外投資を失った現象をいう。この診断に反発したのは、USPのナカホド教授である。
ブラジルで起きているのは、原料の大量輸出でドルの洪水を招き、為替異変を招いた現象だ。その結果、製造業の競争力低下と直接投資の萎縮が起きた。ブラジルが罹患したのはオランダ病か、他の病気か。学界では議論が喧しい。
オランダ病という派と天然資源が豊富な国の宿命という派だ。ナカノ教授はブラジルがオランダ病の重病患者であり、経済を破壊しつつあるという。デウフィン・ネット氏は、コーヒーが輸出の三分の二を占めた六〇年代の経済に逆戻りしたと慨嘆した。リクペロ元財務相は、コモディテイ輸出が製造業の競争力低下を招いたという。
製造業競争力低下の原因は、別にあるとする異論がある。ナカホド教授は統計を基に、原料輸出が製造業の競争力低下を招いたとする考えを否定した。〇五年の輸出は八〇%が工業プロセスを経たもの。四〇%は航空機や通信機器などのハイテク製品や自動車や工作機械の中級ハイテク製品だと主張。しかも前年同期比で一二%増も伸びた。
競争力低下の原因はコモディテイではなく、工業製品そのものにあるとみている。ブラジル産コモディテイの輸出数量の増加と価格上昇もあったが、IMF(国際通貨基金)の調査では、ブラジルの学者が騒ぐほどのことはなかった。競争力低下の原因はコモディテイではないという説で納まった。
オランダ病ではないという診断ならば、何病か。元凶はコモディテイでも鉄鉱石輸出でもないとあれば、製造業者は何を恐れ、なぜ競争力は低下しつつあるのか。答えは、ブラジル自身が経済活力を生み出さないと枯渇するというエントロピー現象ではないか。