2006年3月30日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】政府は二十八日、去就が注目された中央銀行メイレーレス総裁の留任を取り付けたと発表した。パロッシ財務相の辞任に伴い就任したマンテガ新財務相が、中銀の高金利政策は誤りであると指摘し、ブラジルは常識の範囲で基本金利を設定すべきだと言及したことに対し、総裁は不快感を示していた。総裁はルーラ大統領へ直談判に赴き、今後は財務相の頭越しに直接大統領の判断を仰ぐと宣言した。新財務相は今後、中銀に関する限り腫れ物に触わることになりそうだ。さらに新財務相は経済政策で抜本改革や朝令暮改もないが、パロッシ路線の追従もないと意思表示した。
マンテガ新財務相にとって、メイレーレス中銀総裁の留任は穏やかならぬ門出となった。財務省の中に、大統領命令で屋上屋が造られた。大統領府は政治危機解消の反面、政府内に爆弾を持ち込み、ストレスを招いたことを認めた。中銀総裁の閣僚扱いは建前であったが、これからは本音で発言するというのだ。
メイレーレス総裁はパロッシ前財務相の懐刀で、同相了解のもとに政策を決めていた。大統領との直談判で、中銀決定は総裁の去就と関係がないことが何度も確認され、中央銀行の独立性を内外へ明らかにした。これからは中銀の面子に掛けて事実上の権限を強行し、財務省との間に一線を画す考えらしい。
お通夜のような新財務相就任式で総裁は儀礼的挨拶を交わした。新財務相が予算管理相であった時代、同じ机で議論した仲だ。新財務相と総裁の間で火消し役を任じるのは、メルカダンテ上議。同上議がメイレーレス氏を総裁に推薦した媒酌人である。
財務省内もレヴィ国庫庁長官の辞任に始まり、スタッフはマンテガ色に塗り替えられるようだ。財務省と中銀の間には当然、これから摩擦が予想される。予算獲得で財務省と敵対関係にあった各省庁は、新財務相に合流し新勢力を形成する。財務省を中心とする省庁連合が、中銀と対峙するものと予想される。
財務省スタッフの交代に伴う中銀スタッフの交代は、話題になっていない。しかし、基本金利とインフレ政策に対する重圧は予想され、疲れを感じている中銀スタッフもいる。これから通貨審議会(CMN)で毎月、新財務相と中銀総裁は顔を合わせる。
前財務相は、中銀総裁に閣僚扱いで一目を置いていた。しかし、これからはスンナリといかない。独立権限は議会の認知を受けてないし、新財務相にとって中銀は財務省管轄下である。総裁の閣僚扱いは、暫定令で制定されただけ。新財務相が総裁をコケにすることはないと思われるが、閣僚扱いの鍵を握るのは大統領の胸先三寸にある。
マンテガ新財務相は、パロッシ路線の追随を否定した。例えば、完成品の輸入税に対する減税と政府経費の長期調整はないという。輸入税は、国産品の価格高騰の場合のみ減税を行うと述べた。政府経費の調整は活動を消極的にするだけで効果がないとし、公共債務の兼ね合いで行うという。新財務相のパロッシ批判急先鋒のイメージ改善は、不発に終わった。