2006年3月31日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】世界各国で発生が報じられ、各国政府が神経をとがらせている鳥インフルエンザが、ブラジル国内で波及をもたらせている。かといって病原菌が上陸して病気が発生したわけではない。逆にブラジルではその兆候が見られず、政府は防疫体制の完璧さを強調している。問題が波及しているのは鶏肉製造業界で、ここにきて鶏肉の市販価格が大暴落しているからだ。
原因は鳥インフルエンザの影響で世界的に需要が落ち込み、ブラジルの最大顧客であるアジア、ヨーロッパ諸国とサウジアラビアが輸入をストップ、先週から船積をキャンセルしてきたため。このため製造業者は冷凍鶏肉を国内に放出せざるを得ない破目に陥り、これで価格の大暴落を招いた。業界ではマージンなしのコスト価格で放出しているという。
スーパーの最大手のポン・デ・アスーカル・グループは業界の窮状を見かね、サンパウロ州内で傘下のエストラ、コンプレベン、ポン・デ・アスーカルの三百五十四店で特別セールを始めた。一羽丸ごとをパックした冷凍鶏肉をキロ〇・九九レアルで二二五〇キロをめどに販売を始めた。完売した後も継続するとの意向を打ち出している。同店もマージンなしで、このセールで他商品の販売増につながることを期待している。
同グループは先週リオ地区ですでにセールを実施、二トンを売り上げた。鶏肉の通常価格はキロ一・五〇レアルから二レアルで三〇%引きとなっており、一九九四年七月のレアルプラン施行時の価格一レアルを下回る最安値となった。
これに対抗して通常キロ三レアル以上はする羽の部分を一・二五レアルで販売する小売店も出現している。競争相手のウォール・マートでは現在一・四八レアルで販売しているが、他店のチラシなどを持参すると、その〇・〇一レアル安とすることを発表した。つまりポン・デ・アスーカルの〇・九九レアルより〇・〇一引きの〇・九八レアルにするもの。いっぽう業界二位のカレフールも鶏肉製造業者と契約を取り交わしたとして、商戦に加わることを宣言した。このホットな商戦は家庭の主婦にとっては朗報で、買いだめをする人も増えている。
さらに値引きは台所を潤すばかりではなく、インフレ抑制にも貢献している。経済調査院の消費者物価指数(IPC―FIPE)では今月第二週における物価下落幅のトップとなった。 鶏肉輸出協会によると、二月期の鶏肉輸出は六万八五〇〇トンで昨年同期比一九%の減少となり、今年前月対比は六・三%の減少となった。これに対しロドリゲス農務相は需要の下落は消費者の心理的作用によるもので、病原菌はマイナス六〇度以下で殺菌されることを広く知らしめる必要があるとしてブラジル鶏肉の安全性を強調している。