2006年4月5日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三月十五日】古代ギリシャ文明が栄えた二千四百年前、最高指導者に立候補したペリクレスは、市民にタマネギを豊富に供給することを公約とした。ブラジルでは民主主義のシンボルに涙を誘うタマネギよりも、どんな料理にも調和する隼人瓜(シュシュー)が似合いそうだ。
金融市場は、大統領選に向けたアウキミンサンパウロ州知事の公認候補に好感を感じたらしい。公認指名が決定した時点で、取引指数は二%上げ、ドルは〇・四%下げた。次は経済政策でアウキミン候補が何を打ち出すかが焦点になりそうだ。
経済政策でルーラ大統領とアウキミン知事に優劣をつけるのは難しい。セーラ市長が大統領候補であったら、労働者党(PT)政権の左翼政策に対する伝統的なスタイルが決まっているので特徴が見えた。知事の経済政策は、管理に重点を置くカルドーゾ前大統領の政策踏襲のように見える。
財政政策と通貨政策では、知事は従来の保守路線を採ると予想される。政策運営では、知事がルーラ政権よりも積極的で果敢な手法を採ると思われる。大筋でルーラ政権と前政権の相違は複雑で分かり難いが、ルーラとアウキミンの経済政策の相違も同じように判別し難いと思われる。
公認決定の挨拶で知事は、ルーラ大統領ができなかった政治改革と実力主義の狼煙を揚げた。特に現政権の金利政策と為替政策を酷評した。サンパウロ州の産業界は、セーラサンパウロ市長よりも知事の経済政策への変更に期待していたようだ。
セーラ市長は前政権で当初、予算管理相に入閣しマラン前財務相と衝突した。そして保健相へ鞍替えした。前財務相の通貨政策と為替政策を保護政策だと批判し、反マランの急先鋒であった。結果がどうなろうと、ガムシャラに前進する成長至上主義であった。
サンパウロ市長は一月、どこから持って来たのか為替責任制度を発表した。唐突なので専門家は狼狽させられた。同市長は前政権時代、メルコスルとマナウス経済特区に制限令を制定し、猛烈な批判を受けた。
〇七年一月から始まる経済政策で、ルーラ路線とアウキミン路線の相違を想像するのは、重要なことではない。大事なのは両者の政治力だ。ルーラ大統領が再選されると、基盤強化の連立構成で苦労する。第一期でミソをつけたからだ。アウキミン候補が政権を獲得しても、連立は容易でないと予想される。
英紙エコノミストのインタービューで大統領は、誰が大統領に当選するかが問題ではないといった。問題は一党だけでは政治が執れないブラジルで、連立を組み立てられるかだ。超わがままな女と結婚できるか。ましてライバルであった女とも結婚するのが、政治というものだと語った。
理想はPTとブラジル民主社会党(PSDB)が連立政権を打ち立てること。大同小異の経済政策を採る両党にとって、それは丸っきり不可能なことではない。ただ耳を貸さないのだ。PSDBとPFL(自由前線党)は政府打倒で歩調を合わせただけ、経済政策では大差ないPTとPSDBは、いつでも同衾できる間柄だった。