2006年4月5日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三月五日】二年間にわたる交渉の挙句座礁した米州自由貿易圏(FTAA)構想は、米政権の意向にことごとく逆らうベネズエラのチャベス政権をブラジルが積極的に迎え入れたことで、思惑外の方向へ進み出したようだ。米政府は米州諸国と個別外交を始めた。
米政府は反抗的な国々に課徴金制度を設けて孤立化させ、友好的な国を優先している。これはいわば世界一の米市場参入から締め出す、見せしめ的措置と思われる。米政府は三日、ブラジルへの面当てに、コロンビアと自由貿易協定を締結した。続いてチリーやペルーとも、自由貿易協定の合意に至った。
三月末にはエクアドルと協定がまとまる。ボリビアは、アンデス諸国のオブザーバーとして同調を宣言した。米国のFTAA構想が順調に進むなら、ブラジルは対抗意識からベネズエラと協力して、米国の支配を受けないメルコスル南米共同市場の設立に賭けると予想される。
南米に二大市場が誕生するなら、銃は銃口でなく銃尾から発砲するに違いない。FTAA交渉でブラジルは少し欲をかいたようだ。農業補助金制度の全廃と鉄鋼や砂糖、オレンジ・ジュース、製靴への保護貿易を封じようとした。
騎馬戦なら馬を倒したら戦いを止め、敵将の首級を取らなくてもよい。商売をしているのだ。ケンカで負けて、商売で勝つべきではないか。コロンビアは肉を切らせて骨を断つ方を選んだ。大市場獲得のために、一部国内産業が犠牲になるのはやむを得ない。
もし、南米の周辺諸国が対米自由貿易協定を結べば、ブラジルのメーカーは米市場から締め出され、四〇〇億ドルの米国市場を失う。FTAAを棒に振るのはPTのわがままではないか。代価は大きい。