2006年4月7日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】ブラジルとの国境沿いのパラグアイ領土内で大麻栽培が年々増加し、その全てがブラジルの麻薬組織が牛耳っている事態が明らかになった。これらの地域では今年、作付面積五〇〇〇ヘクタールで一万五〇〇〇トンの収穫が予想されている、二年前は三〇〇〇ヘクタールに過ぎなかった。大麻はすべてブラジルに密輸され、サンパウロ州やリオデジャネイロ州の大口消費地はもとより全国の麻薬密売組織にバラまかれる。連警麻薬捜査課によると、昨年の押収物件は一昨年対比六倍に達したものの、それでもまだ密輸の全量の二〇%に及んでいないという。取締りを強化しているが、陸路全長一三六五キロに及ぶ国境線上で、次々と輸送新ルートが出現する、猫とネズミの追いかけっこで効果があがらないのが実情だ。
パラグアイはボリビア同様、大麻の栽培が自由のため、ブラジル当局は陸軍の国境警備隊が空と地上からパトロールはするが、手出しができないでいる。大麻畑は牧場や大豆畑の脇の窪地で湿地林にカムフラージュされた形で広がっている。土地の所有者は麻薬組織リーダーなどブラジルの犯罪組織のボスだ。
ブラジル国内ではペルナンブッコ、マラニョン、パラーの各州で密かに栽培された大麻も出回っているが、パラグアイ産は、麻薬の純度が高く高級品とされている。生育も早く三メートルに成長し、他品種の倍近くになることで採算性が高いことが人気の理由となっている。
取引が集中するパラグアイのカピタン・バド市では一キロ当り一五レアルから三〇レアルだが、ブラジル側のドウラード市(マット・グロッソ・ド・スル州)に来ると一五〇レアルから二〇〇レアルとなり、さらにカンポ・グランデ市では二〇〇レアルから二五〇レアルに跳ね上がる。消費地のサンパウロ市ではグラム当り五レアルとなる。
大麻畑を結ぶ唯一の国道は、関係者以外立入禁止となっている。見張り番がラジオを片手に双受信しており、容赦なく自動小銃を浴びせてくる。警官だろうと無差別に発砲する。このためこの地域では組織同士の武力抗争が絶えない。麻薬のボスとして最凶悪犯のレッテルを貼られて全国の警備が強固な刑務所をタライ回しにされている通称ベイラ・マールも逮捕寸前までこの土地に潜伏していた。
それ以前に大麻王と呼ばれた組織のボスが二〇〇一年、カンポ・グランデ市の刑務所でライバルに殺害されたが、同時に二人の息子もこの地域で殺害された。またその跡目を継いだボスは〇二年、妻と三歳の息子および七人の親族ともども殺害された。この裏でベイラ・マールが糸を引いたとみられている。この直後、ベイラ・マールの片腕とされた男が何者かに射殺され、この地域では血の抗争が未だに続いている。
密告電話を受けた連警は三十一日、フォス・ド・イグアスー市で一一五四キロの大麻を摘発し押収した。大麻は小麦粉二六トンを積んだトラックの中に隠されていた。連警では昨年二三〇トンの大麻を押収、一昨年の三七トンの六倍に相当するも、全密輸量の二〇%に満たないという。
密輸手段はバス、トラック、自家用車、はては自転車にまで至る。最近は子供を運び屋として仕立てるのが流行している。ポンタ・ポラン市では二六キロの大麻を所持してバスに乗っていた十四歳の少年が逮捕された。またフォルミギーニャ(働き蟻の集団)と呼ばれる運び屋は、一台から七台で自転車の荷台に六〇キロの大麻を積み、ポンタ・ポラン市からドゥラード市までの一二〇キロをペダルをこぐ。夜間にしか移動しないため四日間を要する。国道を走行中に自動車のライトが見えると草むらに飛び込んで隠れるため、時間がかかるのだ。