2006年4月8日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】裏金疑惑に関与したジョアン・P・クーニャ元下院議長などの議員が次々と放免されたことで、下院倫理委員会の委員三十人のうち六人が六日、抗議のため委員を辞任した。六人は四人が正委員で二人は補欠委員、さらに三人が抗議文書にサインした。辞任した委員らは、道徳観の低下により倫理委員会の使命は果たされず、国家は汚職に対し感覚が麻痺していると訴えた。六日までは裏金の存在を確認し汚職の糾弾を叫んでいた倫理委員会だが、一部委員の交代で与党労働者党(PT)の議員二人などが委員に就任する予定で、今後の成り行きが注目されている。
辞任し倫理委員会から去った委員六人は、デウガード下議とマグロン下議、ファンタジーニ下議、アレンカール下議、シルメル下議、リラ下議の野党議員。汚職に対し倫理委員会の鉄槌が下るはずだったが、駆け引きが先行する委員会で抗議の辞任は、どうなるのか。
ジョアン・P・クーニャ元下院議長の議員権はく奪を要請したシルメル下議(ブラジル民主運動党=PMDB)は、倫理委員会に最も失望した委員の一人だ。アレンカール下議は、道化役者のカレキーニャに続いて倫理委員の道化が去る番だと述べた。デウガード下議(ブラジル社会党=PSB)は、ジルセウ前官房長官の議員権はく奪を要請した委員である。
倫理委員会の糾弾から放免された下議らは、倫理委員六人の辞任に喝采を以って見送った。下院はもはや議会ではなく、親睦会へ変貌したらしい。倫理委員会が議員権はく奪を決議したのは十一下議、実際にはく奪されたのは三人だけ。あと八人は放免だ。
モラルの低下を訴えたシルメル下議は、何をしても議員権のはく奪はないとし、無意味な倫理審議を拒絶した。元下院議長のはく奪動議が否決された五日、野放しの汚職を嘆いた。暗黒界の大物らが放免された今、小物らを捕らえても無意味であるという。
同下議の見解では、下院議長は議員の模範であり、尊厳と名誉の象徴であるという。元議長が裏金を受領したこと、証言に際し偽証したこと、ヴァレーリオ氏経営のSMPB社と下院が業務契約を結んだことは立件済みである。業務契約は、公的機関に損害をもたらすことを承知で結んだ。にもかかわらず、同件は握り潰された。
連立与党の間には、政治資金の供給や支持票の売買など倫理以前の問題がある。連立政権は見えないところで大金が動き、腐れ縁で結ばれている。許される品行という道徳観がブラジルにある。ルーラ大統領の得意技、見ない、知らない、知ろうともしない。この三つの鉄則を守れば、何も起きないとされる。
同下議は憤まんやるかたなく慨嘆した。政治倫理は、あってない。真実も尊厳もないところで、倫理は死語である。ブラジルは、汚職が国家を蝕むガンであることを忘れた。倫理委員会の役目は評価されない。倫理委員会は存在する理由がない。倫理委員は無力で気力もなくした。