2006年4月8日(土)
【既報関連】デカセギ子弟の教育問題を討議するために、五日から訪日中のフェルナンド・ハダジ教育相は、小坂憲次文部科学相や日伯議員連盟の河村建夫事務局長(衆議)らと相次いで会談し、日本移民百周年に向けて教育面でのプロジェクトを検討した。昨年五月のルーラ大統領訪日時、小泉首相と交わされた覚書を具体化する方向で、一千人のブラジル人青年を日本に招聘、在日ブラジル人学校の教育の質向上を図る件などに関して意見が交換された。
ブラジル教育省(MEC)広報によれば、五日訪日したハダジ教育相は六日、まず小坂憲次文科相と会談。同日、元文科相で、日伯二十一世紀協議会の日本側座長でもある河村衆議とも会い、移民百周年を視野に入れた二国間の長期的視野に基づく文化交流促進政策に関して話しあった。
その一つは、今後五年間に一千人のブラジル人青年を日本政府が招へいするもの。これは〇四年九月の小泉首相来伯時に共同声明として発表された。昨年五月にも改めて「文化・教育交流に関する覚書」に、「今後五年間で一千名を超えるブラジル人学生及び青年を日本に招へいする」として明記された。
ハダジ教育相は翌七日、ブラジル人学校二校を視察すると共に、在日ブラジル人学校協会幹部と懇談し、保育園から高校まで現在八十七校ある在日校への資金援助、十五歳以上への卒業資格検定試験などについて話しあった。
さらに、在日校の教師の質向上を図るため、大学レベルの通信教育による教師の正式資格の取得に関して協議した。在日校に在職するものには、ブラジル法の定める正式な資格を持っていない教員が多いことから対策が練られていた。
この教員養成コースに関しては、マット・グロッソ連邦大学が八〇年代から経験があることから、同大学が中心になって取り組む。同大学は教育省遠距離教育局の持つ教師養成ノウハウを活用しており、日本にいながらにして二百人が資格取得するとみられる。
この通信教育は、ブラジル公開大学(UAB)の事業の一環となる予定。ブラジル公開大学とは、昨年の教育シンポジウムで同省が立案提案したプロジェクトで、通信教育による大学課程の資格取得を可能にするもの。まずは試験的にはじめるという。
このほか、日本で広く展開しているブラジル銀行との提携により、UAB経営科の実験的コースの提案も検討されている。
同広報によれば、ハダジ教育相は今回、技術・職業専門教育について協議するために五月訪日する予定の、ブラジル教育省使節団一行の詳細についても詰めの作業を行った。六月には大学院への支援プログラムに関する同省使節団が訪日する。
これらの話合いを受け、八月に小泉首相に提言される日伯二十一世紀協議会の答申には、大規模な交流事業はじめ、様々な在日ブラジル人コミュニティ支援事業が盛り込まれ、日伯交流年の目玉の一つになりそうだ。