文芸同人誌『国境地帯』が記念すべき十五号を発行した。半年に一回だから七年半になる。節目となる号だけに力が入っている。
末尾に創刊動機が記されている。「日本語を心の拠りどころとしている私たち移民が、一歩外へ出れば現地人と現地語で話し、移民が移民であることを常に自覚しながら、己の内にどっかり座を占めている〃国境地帯〃の中で、生きてきた、あるいは生きている」。
心の中の国境地帯とは興味深い表現だ。時として自分とブラジル人を、場合によっては一世と二世を隔てるものかもしれない。もしくは移住者としての自分と、日本在住者との間に横たわる溝となることもあるだろう。
生活自体が異文化への挑戦ともいえる、移住者独特の心情を端的にしめすキーワードだ。文芸とは形こそ違え、移民の心を文字化するという意味では、邦字紙記者も同じだと思った。(深)
06/04/08