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サンパウロ市で流行のアラストン=急増する集団強盗=崩れたマンションの安全神話=注意と機転で未然防止を

2006年4月14日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】サンパウロ市で今、アラストンという新造語が連日新聞などで取りざたされて流行語となっている。アラストンとは物をかっさらうという意で、マンションに侵入し複数の住人を拉致して、その室から金品を強奪する集団強盗のことを指す。マンションは安全という観念は過去のものとなり、一度の侵入で多額の盗みの成果が上がることで、集団強盗が急増している。強盗団が日進月歩の盗みのテクニックを培っていることもあるが、ビルの欠陥や安全装備を無視した造りに加え、従業員の警備に対する無知や不注意、住人の軽率な行動などが被害の原因となっている。
 三月二十九日から四月一日までにサンパウロ市内で相次いで三件のアラストンが発生した。被害にあったのは南部地区のジャルジン、イタイン・ビビ、モエマ区の高級マンションだった。捜査に当たっている組織犯罪取締課によると、いずれも従業員とくに守衛の不注意が強盗団の侵入を容易にしたという。
 ジャルジン区の例では守衛が三つの基本的ミスを犯した。第一は強盗団が使用した車は住人のものと同種でナンバープレートを偽造していたが、一文字が間違っていたのに気づかず、数字を見ただけで通してしまった。その際運転手が住人本人であるかチェックしなかった。
 第二の間違いは守衛が門を開けたこと。住人はリモコンを所持しており、立ち入りにはそれを使用させること。第三は、守衛室は閉鎖しなければならないのに開けっ放しにして、さらに強盗団が分乗した二台の車が入ったのに不審を抱いてガレージに確かめに行ってしまった。当然守衛は拉致され、人質となりビルは一味の支配下に置かれた。また一味はビル内の様子に詳しく、果ては従業員の勤務時間や住人の生活パターンを知っていた。当局ではマンションの下検分と住人の情報を収集しての用意周到に計画されたものだとみている。
 モエマ区で発生した事件では、住人がリモコンを紛失(あるいは狙われて盗まれた)したのが強盗団の手に渡って侵入された。この時も守衛室の戸が開いていて人質とされ、外にいた残り十人の侵入を容易にした。
 ベラ・シントラ街の集団強盗では防犯カメラに犯人像が撮影されていたが、警察のブラックリストにはなく、新顔集団の台頭とみている。これまでサンパウロ市内では四つの組織があり、南部地区のカンポ・ベロ、ブルックリン、イタイン・ビビの高級マンションを荒し回っている。
 当局では従業員および住人に対し、下記の注意を呼びかけている。
▼ガレージの戸が開いたら素早く出入りする。戸が開いたままでの立ち話は危険。
▼ガレージへの出入りは周囲に注意する。特に守衛は車の後に人影がないかを注意。
▼マンションに近づく人物(配達人や工事請負業者など偽の制服でカムフラージュする)とくにマンション購買の希望を装って情報収集する人物に注意。
▼住人が出入りする場合は周囲での不審な人物に注意。
▼車の故障と見せかけて長時間外に立っている人物はマンションの動きを探っている可能性がある。
▼塀を高くしたり、防犯装置の設置を積極的にビル管理会社に要求する。
▼不審な点はすぐ警察に通報すること。
 ある日系男性(65)は夜半に家族と共にヴィラ・マリアナ区のマンションに帰宅したところ、五、六人の若者がガレージ付近にたむろしているのを発見した。このため危険を予知して、最寄りの警察に携帯から電話したところ、五分も待たずにパトカーが到着、もちろん若者らは急いで姿をくらました。このような注意と機転が本人はもとより、多数のマンション住人の被害を喰い止めることになる。