2006年4月19日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】十年前カラジャス郡エルドラードで殺害された犠牲者十九人の弔いと称して農地占拠運動(MST)のメンバーが十七日、九つの州の各地で抗議集会を開き、農場占拠や積荷略奪などの狼藉をはたらいた。パラー州のMST二千人は、国道PA一五〇号線を三十分間封鎖し、追悼式典を行った。MSTが占拠した農場はサンパウロ州ポンタル・ド・パラナパネーマの十カ所、ミナス・ジェライス州で二カ所。略奪はペルナンブッコ州で、食糧輸送トラック七台を襲った。その他バイーア州やアラゴアス州、リオ・グランデ・ド・スル州、マット・グロッソ・ド・スル州、パラナ州、首都ブラジリアなどで抗議集会が開かれた。
一九九六年四月十七日に起きたエルドラードMST無差別発砲事件の犠牲者十九人を偲ぶ十年忌追悼記念集会が十七日、事件現場で二千人が集まり、国道を封鎖して行われた。追悼式にはMST代表ともいわれるステージレ氏が出席し、一向に進まない政府の農地改革と当局の無能振りに抗議し、七月まで占拠活動を続行すると宣言した。
式典では大統領代理としてヴァヌッチ人権相が、臭いものに蓋をする世相に対して注意を喚起する抗議集会であると挨拶をした。他にハックバルト農地改革相や農地改革省聴聞官、宗教関係者も多数出席した。ブラジル社会の歪みと社会構造が生み出した底辺の社会疎外者を見直そうという。溺れる犬を叩く現代社会の様相を、一般市民に訴えるということらしい。
掘っ建て小屋で露営生活をしているMSTは現在、十五万世帯あり、入植を待っている。人権相はMST側にも許せない過激行動があるが、無差別発砲を決行した軍警が無罪放免というのも問題だと述べた。無言の抗議で訴える庶民層との対話不在という前時代的習慣が、往々にして残っているとした。
追悼式会場には受難劇の舞台が設けられ、MSTの旗に囲まれたキリストが登城し、自動小銃を持ったローマ兵が監視するアジ芝居が行われた。キリストを告訴するのは大地主。十九人の血は、ブラジルで罷り通る政治犯罪や暴力犯罪に抗議する者たちの叫びであると訴えて幕を閉じた。
ジェンロ憲政相は、一部脱線組もあるがMSTを社会運動と位置付けし、罰する考えのないことを表明した。MSTは無党派で、政治的色彩はないとした。MSTが法令の許す範囲で活動するように、当局は監視していると述べた。ブラジルは法治国家であり、法令の枠を外れると政府高官や官憲といえども罰せられる構造になっているが、略奪や占拠を大目に見るのも民主主義のうちという。
MSTが死に体の農地改革にしびれを切らしたことで、憲政相は実態を確認してみると約した。しかし、政治危機で悩む政府にとって重要事項かどうか、ルーラ大統領再選へ影響があるかを見るだけだと涼しい顔をのぞかせた。
会社経営に勤しむ大地主らは、現地からMST占拠の報告を受けた。MSTが社会のハミ出し者であることは誰もが認めることと、地主らはいう。MST活動とは、ポンタル・ド・パラナパネーマを第二のエルドラードにしようとする運動だと訴えた。