2006年4月21日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】IMF(国際通貨基金)は十九日に発表した世界経済展望の中で、世界経済は今年に入り堅実な成長ぶりが予測されているにもかかわらず、ブラジル経済は今一歩の感があると指摘している。このため中期的に高度成長を遂げるためには公共支出の増大が不可欠だと説いている。
ただし、やみくもに財政支出を増やすのではなく、内外の投資家に評価されるような健全なものにすべきだと強調、現時点では不透明な支出が多すぎると突いている、そのためにはプライマリー黒字(金利収支を除く)を基本に、公共支出をより多く盛り込んだ予算の編成が重要だとの見解を示している。
と同時に税制の見直しも必要で、締める所は締めて、ゆるめるべきはしかるべき措置をとるという柔軟性と臨機応変さに欠けているとして、世界トップレベルの高率税金では設備投資の拡大は望めず、工業生産や需要の頭打ちになりかねないとも指摘している。
さらに金融界では弱小銀行が淘汰されて有力銀行に集約されたため、銀行間の競争がなくなり、金融コストがはね上がっているのも経済成長の足かせとなっているという。昨年の銀行決算がいずれも過去最高の利益を計上したのはその表れである。
またブラジルの公的債務はGDPの五〇%以上となっており、近年は決済の推進が著しい点があるも、経済成長のネックとなっている。ブラジルに限らずラテンアメリカ諸国内ではいずれの国も二五%から五〇%で、これが南米大陸の壁となっている。
さらに近年のブラジルの成長は特筆すべきものがあり、とくに経常収支の黒字および農業生産の拡大が挙げられるが、これを他の分野にも浸透させる必要があるとしている。そのためには金利の引き下げが不可欠で、インフレが一段落した現時点ドラスチックな引下げも可能だとみている。
ブラジル政府のインフレ予測は今年と来年でそれぞれ四・五%であり、IMF予測では今年四・九%、来年四・四%と大差がない。GDP成長については今年と来年はいずれも三・五%と予想しており、世界平均よりも低率となっている。
IMFの予想ではラテンアメリカ・カリブ圏内の平均はそれぞれ四・三%、三・六%で、ブラジルよりも高い成長を示している。世界平均は四・九%、四・七%(昨年は四・八%)で、米国は三・〇%、二・八%だが復興の兆しを見せている。日本は二・八%、二・一%と安定、ヨーロッパ平均は三・四%、三・三%で、最高は中国の九・五%、九%となっている。
いっぽうでマンテガ財務相は十九日、今年のプライマリー黒字をGDPの四・二五%とするべく、無駄な公共支出は抑えるとの立場を明らかにした。年末から年始にかけて財政支出が増加したが、今年下半期は引締の方向で推移するとの見方を示した。