2006年4月25日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】リオデジャネイロ州沖のバシア・デ・カンポス海底油田で新たに日量一八万バレルの新油田が発掘されたことで、ブラジルは石油自給国の仲間入りを果した。これによりペトロブラス(石油公団)の原油産出は日量一六八万四〇〇〇バレルとなり、消費を五八〇〇万バレル上回ることになった。
この油田の発掘と石油自給を祝う式典が二十一日にリオ市内で開かれ、ルーラ大統領および主要閣僚、与党幹部、ペトロブラスなどの石油関係者約三百人が出席した。折しも当日、国際原油価格が史上空前のバレル当り七五ドルの大台を突破したことで、式場は二重の喜びに包まれた。
ルーラ大統領は演説の中で、自給国の仲間入りはペトロブラスのたゆまぬ努力に加え、国民の支援の総結集だと手放しに喜んだ。さらに日頃崇拝すると公言してはばからないジェトゥーリオ・ヴァルガス元大統領を引合いに出し、一九五〇年代に時の同大統領がペトロブラスを設立して原油試掘を始めた偉業を賞賛した。当時の新聞記事の切抜きを披露しながら、マスコミ(とくにリオ市のオ・グローボ紙が急先峰)や関係者が、公金をドブに棄てるようなものだとペトロブラス設立に反対したのに対し、強硬に推進したのは先見の明にほかならないと決めつけた。
この直前、大統領は新油田に閣僚らとともに赴き、産出開始のバルブを開放、噴き出した原油を手に浸し、それを高々と掲げてカメラにポーズを取った。それはまさに五四年前の一九五二年、時のヴァルガス大統領がバイア州沖での国産原油発掘第一号を喜んで取ったポーズそのままを再現したものだった。
大統領は上機嫌でご満悦だったが、野党は一斉に反発している。野党側は石油の自給は歴代政権が注力してきたもので、ルーラ政権後の目新しい施政ではないとして、自給は年々の産油量の増加で昨年の時点でめどが立っていたもので、選挙に向けての事前運動に他ならないと決めつけている。
このため公的機関であるペトロブラスを利用した選挙違反に相当するとして、選挙裁判所および国会風紀委員会に提訴するとの意向を示している。自由前線党(PFL)のボーンハウセン党首は、大統領のポーズは「汚職で汚れた手をかざしているもの」だと揶揄した。
ニューヨークの原油取引所では二十一日、六月の先物渡し価格がバレル当り七五・一七ドルとなり史上初めて七五ドルを突破、過去一年間で四〇%以上の値上がりとなった。先進七カ国で形成するG7は、原油高騰が世界経済の懸念につながるとの共同コミュニケを発表した。
アナリストらは高騰の原因を、世界四番目の産油国のイランが核配備をめぐり米国と対立している政治的背景による値上げと、五番目のナイジェリアで内紛が続いているために生産が不透明になっていることを指摘している。