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米市場から敗走するブラジル=中国製品相手に=構造改革と長期戦略立案を=低賃金で競ってはダメ

2006年4月26日(水)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十六日】米州開発銀行(IDB)に出向したマウリッシオ・メスキッタ財務理事は十五日、国際市場をグローバルに観察した場合、ブラジル産業は中国の標的とされ、敗走していると警告した。それはブラジルが九〇年代、市場開放し輸入品に対抗するため産業の構造改革を行ったのと同じ位のインパクトであるという。米州自由貿易圏(FTAA)構想が頓挫、ブラジルがうろうろしている間に米市場は中国の製造業に乗っ取られた。そのためにブラジルの製造業は空洞化を余儀なくされるとみている。
 米市場だけを見るならブラジルの敗退は将来、ブラジルの死活問題に発展すると同氏が警告した。FTAAで損をしたのはブラジル、儲けたのは中国。米国にとっては痛くも痒くもないことで、ブラジルが注意を払うべきは米国ではなく、中国であるという。以下は同氏の意見である。
 【ラテン・アメリカにとって中国とは】中国はライバルであり、同時にチャンスを提供するもの。産業別に見るなら、農業と鉱業にはチャンスをもたらす。しかし、製造業にとっては食うか食われるかの強敵。理由は人件費が格段に安く能率は高く、生産工程や産業構造の改革で政府が積極的に支援しているからだ。
 【中国に対抗する法】中国が得意とする低賃金で、競ってはならない。ブラジルに残された道は、商品のバラエティと技術、低賃金を必要としない分野と中長期投資で開拓すべき分野への進出だ。低賃金で競うなら北東部地方の人材という選択肢はあるが、米市場で競うなら地理的条件をブラジルは生かすべきである。農産物と補助金にこだわってブラジルは欧米市場を過少評価し、製造業にとっての米市場の重要性を見落とした。ブラジルは、なぜ中国やインドにこだわるのか。これまで米市場で培った体験を軽視してはならない。
 【ブラジル製携帯電話や航空機を米国へ輸出したが】リスクは米国ではなく、中国製の携帯電話や航空機に取って代わられること。米中自由貿易協定が締結されたら、ブラジルはどうするのか。貧困層を救い出すのは農業やサービス業ではなく、工業である。製造業が空洞化に追いやられても、オーストラリアやチリのように自然の条件を活かして産業を興した例がある。
 【為替問題は】世界共通の問題で、ブラジルだけが克服できないのは勉強不足ではないか。例えば、中国方式や日本方式がある。ブラジルも独自方式を開発すべきだ。為替は変動相場制が世界の常識といっても、需給による評価方式はブラジル向きでない。
 為替市場にとてつもない強敵が現れれば、為替の需給関係は崩れる。評価の相関性がなくなり、ブラジルのような国は立ち行かない。ブラジルはドルの急落を管理すべきである。それに国際金融のシステムも、学ぶ必要がある。
 【為替条件が不利で、中国製品が怒涛のように入るにもかかわらず、輸出も増えるのは】一時的な現象である。いつか事情は逆転する。ブラジルは九〇年代、能率を向上させたが、二つを改善できなかった。構造改革ができない不安定な政治と為替を無視した財政金融政策。その結果、対中国戦略が留守になった。ブラジルの農業不振は長期戦略がない好例だ。
 中国には非民主的なものだが、各産業分野に長期戦略がある。中国では優良企業と不良企業の選別が徹底している。優良企業は数々の恩典を受け、不良企業は直ちに閉業を命じられ、情け容赦がない。
 ブラジルでは、実行不可能なシステムである。中国では信賞必罰制度を採用しているが、その基準に透明性がない。勝って生き残るための政策をブラジルは真似できない。ブラジルが生き残るためには、改革が急務である。中国はこのルールを国際市場にも適用する。米国でも似たような考え方がある。それに異を唱えるには、外交ルートしかない。