ペンと眼鏡、それに邦字紙。故・中隅哲郎氏(人文研元理事、旧日本語普及センター元副理事長)の遺影の前に、必ず供えられている品物だ。
「あの世にいっても、文章を書き続けてほしい」。そんな遺族の思いが込められている。同氏の七回忌が二十一日、西本願寺で営まれ、約八十人が参列した。
未亡人によれば、研究意欲は死の直前まで衰えなかった。一時入院したサンパウロ病院で日系の医療従事者が多いのに気付いたとたん、ネタにしたいと口にしたという。
『ブラジル学入門』などの著書を残した。亡くなる前々日に、普及センターの会議に出席。最期まで、日本語教育やコロニアの行く末を案じた。
仏壇に手を合わせるたびに、物書きとしての矜持を見習いたいと思う。 (古)
06/04/27