2006年4月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】サンパウロ市衛生局では今、幼児および寝たきりの高齢者に対し、寝る前に手と口のまわりを良く洗うよう注意を促している。この呼びかけは何の変哲もなくいわば保健衛生の常識であり、何を今さらと思うだろうが、当局の意図するところが夜中にネズミに噛まれないための予防だと聞くと多くの人は目を剥くに違いない。当局によると、サンパウロ市内の住宅や事務所などの全家屋の一一%にネズミが侵入しているという。いわば一〇軒に一軒以上がネズミと同居していることになる。ネズミは活動範囲が広く隣近所に散歩に出かけることから、ほとんどの家屋がネズミに侵入されている。このネズミどもが子供や高齢者の手や口の周りにくっついている食べ物カスに噛みつくという訳だ。ネズミの好物はチーズが定番となっているが、チョコレートも大好物なことはあまり知られていない。とくにチョコレートをよく食する子供は要注意だ。
ネズミは過去十年間でネズミ算式に急増しており、特に二〇〇〇年から〇四年までは六倍となり、ネズミが媒体となるレプトスピローズの罹患者は千六百十一人に達し二百六十人が死亡した。今年に入り四月八日までに九一件発生し、四人が死亡している。
発生や死亡の原因は降雨による出水や河川の氾濫でネズミが繁殖すると思われがちだが実は関係なく、今年死亡した四人は不注意や予防知識の欠如が原因だった。家の物置や排水溝を素手で片づけて伝染したり、手足に傷口があるのに庭掃除をして菌が体内に入りこんだりしたものだった。
サンパウロ市でもっともネズミの発生が多いのは東部のイタケーラ区やグァイアナゼ区と言われているが、高級住宅街のモルンビー、ジャルジンス、パカエンブーも例外ではなく所構わずの様相を呈している。
世界各都市でも悩みの種で、イギリスでは二〇〇二年に全住宅の四・六%が侵入されたため、撲滅作戦が展開された。一九七九年にはわずか一・三%どまりだった。キューバでは七七%から一三%に減らすことに成功した。
サンパウロ市で最も多いのは屋根裏などを棲家とする体長一六センチから二一センチのもので色が黒いことから黒ネズミとも呼ばれている。樹木をかけ昇るし、塀も易々と上り、電線や洗濯干しの紐を通路にして機敏に活動する。このほかドブネズミの類は灰色がかりで体長一八センチから二五センチ、中には猫の大きさに成長する。穴掘りが得意でドブや排水溝、ゴミ捨て場をたむろする。
市当局では先週からパンフレットを配布してネズミ追放作戦に乗り出した。手始めに中央市場(メルカドン)の路上および排水溝を清掃し、殺鼠剤を散布した。グリセリオ街も同様の措置を施す。
メルカドン近くでタクシー業を営む運転手によると、近くのセナドル・ケイロス通りでは夜半、ゴミ袋を漁るためにネズミが行列をなしてくるという。彼は近郊に住んでいるが、夜中にネズミが暴れるため泥棒と間違えて家族中が眼を覚ますのが日常のことだという。当局では各区長にネズミの発生状況のリポートを提出させて、順次に追放作戦を手がけていく方針を打ち出した。