2006年4月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】幼児や児童の虐待が今、改めて社会問題として取り上げられている。児童保護を目的に設立された青少年研究所によると、一九九六年から二〇〇四年までに、一一万二五〇件の虐待が登録されたという。内訳は子供を放置したままで食事や衛生を省みないのが四万四八九〇件、肉体的暴力が三万六四七八件、精神的迫害が一万七一七一件、性的暴行および虐待が一万一二三八件だった。
サンパウロ市内の十五カ所に設けられている児童相談所によると、サンパウロ市内では昨年一年間で六八三件が発覚した。このうち三五九件は過度の虐待で子供は親から引き離れて当局の手に委ねられた。内訳は肉体への暴力(せっかん)が一三二件、放置が一三三件、精神的迫害が一六二件、性的暴行が五七件(このうち三八件が再発のおそれがあるとして当局が介入した)だった。
同相談所は、虐待はほとんどが家庭内で両親により行われたもので実態はつかみ難く、前出の数字は氷山の一角で実数はさらに増えるとみている。また虐待は経済的余裕のない貧困層に多いと思われがちだが、中産階級以上でも多発しており、ほぼ同数の割合となっている。
とくに夫婦共稼ぎの家庭では仕事上のストレスがたまり抵抗しない幼児に八つ当たりするケースが増えている。また心の準備ができていないままに妊娠して出産するケースも多く、育児に慣れず子供の泣き声に腹を立てる若夫婦も増えているという。
サンパウロ市モッカ区で二月、二十六歳の父親が十一カ月の娘の泣き声に腹を立てて殴りつけたり壁にぶつけたりした挙げ句に、歩行器にのせたまま二階から突き落として重傷を負わせた。男は幼児虐待および傷害で逮捕された。夫婦は共稼ぎで事件当時、妻は勤務先から帰宅していなかった。
リベイロン・プレット市では十六歳の未婚の女が、やはり泣き声がうるさいと十カ月の実娘を殴り死に至らしめた。この幼児は足の骨も折れており、せっかんは以前から続いていたことを示した。
今年に入り、母親が湖に生後間もない幼児を捨てたり、川に投げ込んだりしたニュースが報じられ、世間のひんしゅくを買った。サンパウロ市内では先週、父親が一年十カ月の男児を車の後部座席に忘れたため、日中の暑さで死亡させた。これらの不注意も虐待に分類されるという。
同相談所によると、非行青少年のほとんどが家庭内暴力や虐待の経験者だという。十八歳のガブリエラさんは二歳の女児の母親だが、相談所のアドバイスを受け自分が母親に虐待された二の舞を踏まぬよう努力している。彼女は家庭内暴力から逃れるために十三歳の時に家出し、強盗団に身を投じた。その時の補導歴は一五七回に達したという。暴行を加えた母親も今は改心して相談所にボランティアとして通い、孫を可愛がっている。