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財務相と中銀総裁が衝突=金利引き下げめぐり=「余裕ない」「いや、ある」=総裁、大統領へ即刻直訴

2006年4月29日(土)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十八日】通貨政策委員会(Copom)の決める基本金利(Selic)をめぐるマンテガ財務相とメイレーレス中央銀行総裁の確執が二十七日、表面化した。二十七日発表の議事録によれば、Copomは今後金利引き下げを小刻みにするか、政府経費の削減が進まない場合は中止もありうることを示唆した。サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の会議に出席した財務相が、議事録の反響を緩和するためCopomの決定はインフレ圧力のためでもなく、引き下げを中止したわけでもないと修正した。中銀総裁は、財務相の発言が軽率であると不快感を示した。
 三月二十七日に就任して以来、マンテガ財務相が初めて中銀と不協和音を奏でた。中銀が基本金利の引き下げ率を縮小することを示唆するいっぽうで、財務相が引き下げ余裕はまだあるとFiespで発言し、物議をかもした。
 ルーラ大統領は、発言内容は理解するものの中銀の手前と公人の発言としてふさわしくないと批判した。中銀総裁は大統領府に走り、財務相発言が今後の金利引下げについての中銀の判断に水を差したと大統領へ直訴した。
 開発優先を標榜する財務相に対し保守派の中銀総裁は、パロッシ経済路線の後継者として政府内で発言力を強めるつもりのようだ。大統領は大統領選挙を前に市場を刺激する言動を慎むよう財務相に要請した。
 中銀の中にも、メイレーレス派と反メイレーレス派があるらしい。経済局のベヴィラッカ局長は反メイレーレス派で、現在窓際で閑職の身にある。Copomも二派の対立がハッキリしている。
 大統領は財務相を呼んで、中銀総裁と波風を立てずに基本金利を引き下げる手立てを話し合った。中銀総裁は、中銀を子飼いで固めることと大統領への取り入りで忙しい。財務相の議事録発言は、大統領と総裁の間に水を差し、総裁包囲網を狭めたと中銀の古典経済学派を喜ばせた。
 中銀総裁の見方では、最低賃金を三〇〇レアルから三五〇レアルに引き上げたことで、軽いインフレが発生する。選挙キャンペーンが近づくに従い市場も加熱するから、基本金利を上げずにインフレを抑制することを検討するという。
 Fiespの会議に出席した財務相は、議事録の文字面だけの判断を戒めた。基本金利の下げ率縮小は、単なる表現だという。インフレ率の目標はすでに達成しており、金利引下げとクレジットの増額はあり得ると楽観論を述べた。通貨政策に変更のないことを財務相は示唆した。産業界を動揺させたのは、金利引下げ中止示唆の語句注釈を巡ってであった。
 Copomは今月、基本金利を一六・五〇%から一五・七五%へ引き下げた。金利引き下げの効果が不透明で、これからの経済動向が見えないという。同じような表現は、二〇〇三年十二月の議事録にもあった。当時も金利を七カ月連続で引き下げたところ、引き下げ継続があるものと投機筋だけが先走りした。
 最近の実質金利はこれまでの最低水準にあるが、ブラジル経済がどう反応するのか中銀はわからない。現行の実質金利水準で、なぜ景気が回復しないか論じるのは、中銀の苦手なことらしい。中銀だけがインフレは鎮静し、経済回復の環境は整ったと思っている。