2006年5月3日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日、二日】ルーラ大統領はサンパウロ州サン・ベルナルド・ド・カンポス市で一日に行った演説の中で、現在の政局と今年の選挙に触れ、施政の正邪は国民が判断するものだとの考えを強調した。
大統領は一日午前、同市内の中央教会のメーデー記念ミサに、夫人およびマリニーニョ労働相や、サンパウロ州知事選に出馬表明しているマルタ前サンパウロ市長ならびにメルカダンテ上議らとともに参列した。
この教会では労働者党(PT)設立当時、党員(金属労組)がスト決行で警察当局から追われた時にかくまったことからそれ以来、守護神として敬われてきた。大統領は一九八〇年、時の政治警察(DOPS)に政治思想犯として収監されて出席できなかった年を除いて毎年欠かさずミサに参列してきた経緯がある。
ミサの後、千五百人の参列者を前に演壇に立った大統領は政局につき熱弁をふるった。ほかに三人の党幹部が選挙に向けて所信を表明するなど、教会は政治のるつぼと化して場違いの熱気につつまれた。
大統領は労働祭の当日にちなみ、三十九カ月の政権の中で雇用の拡大と個人クレジットの簡易化に注力したことを挙げ、労働者の生活の向上で効果を上げたことを強調した。中でもコンサイニー融資(貸付金の月賦返済を給料の銀行振込時に天引きする)で年末の買物や旅行が容易になったと施政を自賛した。これにともない政治の判断は国民にゆだねるべきで、野党の攻撃は論外だと決めつけた。
永年野党として過激な政府攻撃を繰り返してきたルーラ大統領がこのような発言をしたことで、一八〇度の豹変ぶりに驚く関係者も多く見られた。
さらに大統領の続投については六月三十日の立候補届出期限までまだ時間があるとして、今から大騒ぎするのは一部の興奮し過ぎた人間のやることだと、暗にブラジル民主社会党(PSDB)の選挙運動内で政府批判発言に釘をさした。しかし、いっぽうでPTが政権を維持するためには連立政権が不可欠だとして前日の党大会決定を支持した。
さらに自身としては、ブラジル民主運動党(PMDB)との連立を最優先して推進させたいとの方向性を示し、出馬の意向を固めていると見られる微妙な発言をした。
いっぽうで三十日に開かれたPT全国党大会で他党との連立を承認する採択が賛成多数で決定された。ただし、社会大衆党(PPS)、PSDB、自由前線党(PFL)の三党との連立は拒否することになった。さらに前日に執行部が決定した国会スキャンダルで党内疑惑の責任の追及については、選挙後に先送りすることも決定した。これによる党籍はく奪に触れていないため、解明は闇に葬られるとみられている。