2006年5月3日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙四月七日】ノーベル経済学受賞者のジョセフ・スチグリッツ博士が、多くの点で似ているとルーラ大統領とメジシ大統領を比較した。軍政時代に奇跡の経済成長を演出したメジシ大統領が、経済は順調なのに国民は困苦にあえいでいると嘆いた。現在も似たような状態にある。
同博士はワシントンのゼミで「対称的な発展」と題し、世界銀行の思惑と逆行したブラジルのパズルについて講演を行った。ルーラ大統領は、貧しい国民のために社会福祉で予算を費やすより、国際通貨基金(IMF)の融資を決済する道を選んだ。
ルーラ大統領は、社会政策を犠牲にして金融市場を喜ばせたクリントン前大統領の轍を踏むという。クリントン前大統領は二期八年を務め、唯一の功績といえば財政赤字を減らしたこと。次期共和党政権のため金庫にドッサリ金を置いて行った。ブッシュ政権は豊かな財政により、金持ちに減税を行って喜ばれた。ルーラ大統領も同じことをしている。
パロッシ前財務相は四年間、高金利政策を採り豊かな財政を実現したが、産業界を疲弊させた。金融市場を育てながら犯罪人のように追放され、連邦警察の捜査対象となっていることで、前財務相の功績はウオール街を喜ばせたことだけと皮肉った。労働者党(PT)政権では政治と経済は別物であったと同博士がいう。
PT政権の誤りは、二期続いたクリントン政権の誤りと似ている。同前大統領の公約は、国民第一主義で教育と技術革新、国民との会話に重点を置くはずであった。しかし、ウオール街が財政赤字の削減で圧力を掛けた。結果として支援者をないがしろにして共和党へ政権を渡した。
ルーラ大統領も金融市場を盛り上げ、ルーラ支持者には忍耐を要求した。そういいながら、アッという間に四年が過ぎた。ルーラ大統領は、貧しい支持層に農地改革など、何かをしてあげられたはずだ。しかし、大統領は貧困層をソデにしてIMF決済を優先した。
アジア諸国並みの輸出やマクロ経済指標は素晴らしいが、ブラジル経済は成長しなかった。それは、高金利がもたらした。現在は国際的な話し合いの場が設けられ、変化の過渡期にあると同博士はみている。
ワシントンでは覇権外交に代わる協調外交が今話題になっている。これまでの目的と手段を混同した失敗例は退歩を余技なくされた。これまでの社会政策は社会格差の是正やインフレ対策を優先し、失業対策をおざなりにした。これからは反対に雇用創出に努力することになるという。