2006年5月4日(木)
不可能だと言われていたマホガニーの植林技術を確立したパラー州カスタニャール市の岡島農場の岡島博さん(北伯群馬県人会会長)。しかし、国立自然環境保護院(IBAMA)がマホガニーの伐採、売買などを禁止しているため、せっかく昨年収穫した種子百二十万本分が無駄になろうとしている。
先月二十八日来社した岡島さんは、「アマゾンには世界的な木材需要を補えるだけの可能性がある。これが成功すれば、地元も社会も潤うのに」と残念そうに話した。
岡島さんは、リオデジャネイロ国連環境開発会議に感化されて、九二年に胡椒との間伐からマホガニーの植林を始めた。現在、十四年ものと十三年ものは、胸高周囲約一メートルに成長。二〇二〇年には八万立方メートルの木材資源の蓄積が見込まれている。
昨年岡島農場で生産された種子は、重さにして一千キログラム以上になる。ところが、「切ることのできない木を育てる人はいない」ため、種の買い手がつかず、発芽時期を過ぎれば、種は焼却されてしまう。
政府は〇一年の立法により、マホガニーが天然か植林されたものかにかかわらず、その伐採、加工、輸出全てを法により禁止した。アマゾン一帯の熱帯雨林伐採は世界的な環境問題の一つとして注目を集め、国連や環境保護団体から、商業目的の違法伐採を厳しく取り締まるように圧力がかかっているため、これに応えたものと考えられる。
これに対し、岡島さんは、「単に伐採を禁止する森林政策は、まさに本末転倒」と訴える。「植林をも全否定する政策を行っていることは、植林技術研究や害虫対策さえも否定するものになっている」からだ。
マホガニーはその植林の過程で、成長する芯を害虫マダラメイガに食害されてしまう。岡島さんは、群馬県庁からの研究者とともに、三千本のマホガニーを試験し、害虫のつく要因を分析している。学会等での発表をもって政府による植林の承認がほしいところだ。連邦や州の議員に訴えかけ、植林されたものの伐採を許可するための法の改正を求めてきた。
アマゾンでは、アフリカ・マホガニーやチークなどの外来種の植林が拡大している。在来種の木材伐採の禁止、規制に対して、植林を行っている者が集まり対策を議論しているが、伐採のための許可は降りていない。また政府の監視にもかかわらず、天然木の違法伐採は今でも続けられており、表面的な対処ではなく、長期的な展望をもった解決策が望まれている。
岡島さんは、十二歳で移住しアマゾンで開拓を行って一家を養ってきた。「できない事を可能にして、恩返しをしたい」と思ったという。「植林によって、アマゾンの銘木を持続的に生産し、それをもって天然のマホガニーを守りたい」。
しかし今、岡島さんのマホガニー植林事業は暗礁に乗り上げている。「これまで農業をやってきてこれほどやりがいのないことはなかった」と同氏は、移住してからの生活を振り返りながら困難を訴えた。