2006年5月9日(火)
「サトウキビ畑に圧倒された。百聞は一見に如かずと実感しました」。農水相としては二十四年ぶりの来伯となる中川昭一大臣の来伯により、七〇年代のセラード開発以来の日伯農業界での大きな動きが期待できそうだ。五日にはロドリゲス農相との会談が行われ、両相は年一回の定期会談で合意した。ブラジル側通信社などによれば、エタノールにかぎらず広い分野での技術提携や、専門家や大学レベルでの交流、日本への加工品の輸出などに関する検討を進める作業部会を設置することも承認された。今年末までに大きな方向性を決め、百周年までに具体的な事業をはじめることを目指しており、大型プロジェクト発足を期待する声もでている。
五日夜、サンパウロ市内のホテルで行われた記者会見で、三日から訪伯していた中川農水相は、日系農家に関して「移民史料館を見に行って、セラード開発などを含めて日本がずいぶんブラジルの農業に関わり、貢献をしてきたのだと実感しました。日系の方々がブラジルの農業に大変貢献されてきたことを嬉しく思います」とほめたたえた。
同日午前、サンパウロ州プラドポリス市内のエタノール工場視察のあと、ロベルト・ロドリゲス農相のファゼンダで会談した。
両農相はお互いの国を訪問しあう形で毎年会談することで合意した。二十四年間来伯がなかったが、今後は農業を核に一気に縮まりそうだ。
中川農水相は「単なるエタノールの売買契約ではなく、技術的・資金的な面を踏まえて、包括的な関わりをもって、世界のエネルギーに両国で貢献していきたい」とのべ、結びつきを深めることに強い意欲をしめした。
ブラジルは世界の三五%を牛耳る最大のエタノール生産国、最多の二十億リットルを輸出する。だが日本側は常々、安定供給の保証や価格の変動性の少なさを求めてきた。今回は、生産拡大に関する技術や資金協力を日本がすることなども話し合われた。
時事通信やアジェンシア・エスタードによれば、ブラジルがエタノール生産のノウハウを提供し、日本の政府開発援助(ODA)を使ってインドネシアやアフリカ諸国などの途上国への技術移転を図る提案をロドリゲス農相が行った。これにより、世界的な市場形成による供給と価格安定に、日伯両国が協力し合うアイデアだ。
ロドリゲス農相は自分のファゼンダでの昼食で、柿、カランボーラ、ゴイアバ、イチゴなどを並べ、使節団に供した。山中イジドロ特別補佐官によれば、ロドリゲス農相はフルーツや牛肉の輸出に関して再度提案。日本に輸出できそうな品目の洗い直し、検疫の簡素化や加工技術に関して検討を進める予定だという。
調査を進める上でも「まずは、もっと技術者などの交流が必要だとの認識を共有しました」(山中特別補佐官)という。関係者によれば、両国大学レベルの学術交流、農協の交流、農業シンポジウム開催なども百周年に向けて提案されている。作業部会の結論次第では、次々にいろいろなプロジェクトが生まれる可能性もあるという。
アジェンシア・サフラスによれば、ロドリゲス農相は両国農水省主導の百周年記念事業を検討することも提案した。今回の合意をうけ、日本へ専門家による使節団を派遣する予定だ。
同日、アモリン外相との電話会談も行われ、中川農水相は「日伯の多角的な貿易が両国にとって重要。(両国は)位置は離れていても、土台は一緒」と日伯の関係強化へ意思を示した。